
親知らずは口の奥に生えているため、歯磨きがしづらく、虫歯や歯周病を引き起こしやすい場所です。また、親知らずが正しく生えなかったり、斜めに生えていたりすると、歯茎を圧迫して痛みを生じることがあります。親知らずの痛みの原因とその対処法についてご説明します。
▼親知らずを抜歯した後に痛みが出ている場合は、こちらを参考にしてください。
親知らずが痛い原因
親知らずは一番奥に生えている歯であり、以下のような特徴があります。
- 磨きづらい
- 汚れが溜まりやすい
- 歯茎の炎症が起きやすい
- 痛みが生じやすい
そのため、親知らずが痛くなる主な原因として、以下のようなものが考えられます。
- 親知らずの萌出不全・・親知らずが正しく生えきらず、歯茎に埋まった状態や斜めに生えている場合、周囲の組織を圧迫し、痛みを引き起こします。
- 親知らずの炎症(智歯周囲炎)・・親知らずの周囲の歯茎が炎症を起こし、腫れや痛みが生じることがあります。これは、歯茎の一部が親知らずに覆いかぶさり、細菌が繁殖することで引き起こされます。
- 虫歯・・親知らずは奥に位置しているため、歯磨きが難しく、虫歯になりやすいです。虫歯が進行すると、痛みが生じることがあります。
1. スペース不足によって圧迫されている
親知らずが生える際、顎の骨に十分なスペースがない場合、隣の歯を圧迫することがあります。この圧迫により歯茎や歯根周辺に炎症が起き、痛みが生じることがあります。
- 特に顎が小さい現代人では、親知らずが正しく生えるためのスペースが不足しているケースが多いです。
2. 埋伏歯(埋もれた親知らず)がある
親知らずが完全に生えておらず、歯茎や顎の骨に埋まったままの状態を「埋伏歯」といいます。この場合、歯茎の下で炎症が起きることがあり、痛みや腫れを引き起こします。
- 一部だけ生えた親知らずが歯茎を刺激して炎症を引き起こす「智歯周囲炎」もよく見られるトラブルの一つです。
3. 不正咬合によるもの
親知らずが斜めや横向きに生えると、他の歯を押しやることで歯列全体が乱れる場合があります。この不正咬合が原因で咀嚼時に違和感や痛みを感じることがあります。
4. 虫歯や歯周病
親知らずは奥に位置するため、歯磨きが行き届きにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。これらの問題が進行すると、激しい痛みや腫れが生じることがあります。
- 親知らず自体が虫歯になるだけでなく、隣接する第二大臼歯にも悪影響を及ぼすことがあります。
5. 歯茎や骨に炎症が起こっている
親知らずの周辺に細菌が入り込むと、炎症を引き起こし、痛みを伴うことがあります。特に免疫力が低下しているときや、親知らずが生えかけている段階では、炎症が起こりやすくなります。
親知らずが痛いときの対処法
親知らずのあたりが痛いのは歯垢(プラーク)などの汚れが原因であることが多いです。痛みのある時は、以下のような対処を行いましょう。
- 冷やす・・腫れを軽減するために頬を冷やす。
- 痛み止めの服用・・市販の鎮痛剤を使用して痛みを緩和。
- 塩水でうがい・・口腔内の細菌を減らし、炎症を抑える。
- 食事の工夫・・なるべくやわらかい物を食べる
- 歯科医の受診・・早めに歯科医院へ
ただし、症状が続く場合は早めに歯科医院を受診することをお勧めします。
1. 冷却
親知らずの痛みを感じる部分に冷たいタオルや氷を包んだ袋を当てることで、炎症を抑え、痛みを和らげることができます。冷却は15〜20分間行い、その後少し時間を置いてから再び行うと効果的です。
2. 痛み止めの使用
市販の痛み止め(鎮痛薬)を使用することで、痛みを一時的に和らげることができます。イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬が一般的に用いられます。ただし、用法用量を守り、長期間の使用は避けてください。
3. 塩水でのうがい
温かい塩水でうがいをすることで、炎症を抑え、痛みを軽減することができます。塩水は、コップ一杯の温かい水に小さじ1杯の塩を混ぜて作ります。うがいは数回繰り返し行うと効果的です。
4. 食事の工夫
親知らずの痛みが強い場合、硬い食べ物や辛いものを避け、柔らかい食べ物を選ぶようにします。刺激の少ない食事を心がけることで、痛みを和らげることができます。
5. 歯科医の受診
親知らずの痛みが続く場合や、腫れがひどくなる場合は、早めに歯科医を受診することが重要です。必要に応じて、親知らずの抜歯や抗生物質の処方が行われることがあります。
親知らずを放置するリスク
親知らずを放置することは、短期的な問題だけでなく、将来的な健康にも大きな影響を及ぼす可能性があります。以下は、親知らずを放置した場合に考えられる具体的なリスクと、それが引き起こす可能性のある問題です。
- 隣の歯へのダメージ
- 顎骨への炎症の拡大
- 歯列不正の進行
- 全身的な健康への影響(顎の骨髄炎など)
1. 隣接する歯へのダメージ
親知らずが隣の第二大臼歯に押し付けられると、次のような問題が生じることがあります。
- 歯根の損傷
親知らずの圧力が第二大臼歯の歯根を傷つけ、歯が弱くなる場合があります。これにより、隣接する歯の寿命が短くなることがあります。 - 隣の歯の虫歯
親知らずと隣の歯が接触している部分は、歯磨きが行き届きにくく、虫歯が発生しやすい「プラークトラップ」になる可能性があります。虫歯が進行すると、痛みや抜歯が必要になる場合もあります。
2. 智歯周囲炎の慢性化
親知らずの一部が歯茎の下に埋もれている場合、歯茎の周囲で炎症(智歯周囲炎)が繰り返し発生することがあります。
- 慢性的な腫れや痛み
炎症が繰り返されると、歯茎が腫れやすくなり、食事や日常生活に影響を与えることがあります。 - 膿瘍の形成
放置すると膿が溜まり、さらに痛みや不快感が増加することがあります。この状態は早急な治療を必要とします。
3. 顎骨への影響
親知らずが正しく生えない「埋伏歯」の場合、顎骨に悪影響を及ぼすことがあります。
- 顎骨嚢胞の形成
埋伏した親知らずの周囲に嚢胞(液体が溜まった袋状の構造)が形成されることがあります。これが大きくなると顎骨を圧迫し、骨が弱くなることがあります。 - 顎の骨髄炎
放置された親知らずの感染が顎骨にまで広がると、骨髄炎を引き起こすことがあります。これは強い痛みや腫れを伴い、治療が遅れると全身的な健康にも影響を及ぼします。
4. 不正咬合が悪化する
親知らずがスペース不足で生える場合、他の歯を押しやってしまい、不正咬合が悪化することがあります。
- 矯正治療の必要性
歯列が乱れると、見た目の問題だけでなく、噛み合わせや発音に支障をきたすことがあります。その結果、矯正治療が必要になる場合があります。
5. 全身的な健康リスク
口腔内の感染が他の部位に広がることは珍しくありません。親知らずが原因となる炎症が悪化すると、以下のような全身的な影響を引き起こす可能性があります。
- 心内膜炎
口腔内の細菌が血流に乗って心臓に到達し、心内膜炎を引き起こすリスクがあります。 - 糖尿病の悪化
慢性的な炎症は糖尿病の管理を困難にする要因となることがあります。 - 免疫力の低下
慢性的な感染が体全体に負担をかけ、免疫機能を低下させる可能性があります。
6. 日常生活への影響
親知らずを放置することで起こる痛みや腫れは、次のような日常生活への支障を引き起こす可能性があります。
- 食事がしづらくなる
- 会話に違和感を覚える
- 集中力の低下や睡眠不足を招く
親知らずの生え方はさまざま

親知らずは
- 他の歯と同じようにまっすぐ生えている
- 部分的に歯茎に埋まったり斜めに生えていて他の歯に悪影響を与えている
- 丸ごと全部歯茎に埋まっている(レントゲンでしか見えない)
- 生まれつき存在しない
の4パターンがあります。
特に②の部分的に歯ぐきに埋まっている状態だと、親知らずの周り・歯ぐきとの境目などに汚れが溜まりやすく、歯茎の炎症が起きやすくなります。
また①の他の歯と同じようにまっすぐ生えていても、一番奥にあるため歯ブラシが届きづらく、虫歯や歯茎の炎症が起こりやすいです。
親知らずが痛みを繰り返す場合は

痛みを繰り返すようなら抜歯を検討しましょう。上下の親知らずがまっすぐ生えていて、そこでものを噛むなど機能しているなら良いですが、そうでなければ親知らずはほとんど機能していない歯です。
炎症・痛みを繰り返しているならなおさら良いことはありません。歯茎の炎症だけでなく、虫歯になっている場合は手前の歯に影響することも。
また親知らずが歯茎に埋まっている場合などは難しい抜歯となります。そのため町の歯医者では行わず、大学病院へ行くよう言われることもしばしば。
そしてやはり、年齢が若いほど抜歯後の治癒が早いです。そのため親知らずは早めに抜歯するべき歯であると言えます。
まとめ
親知らずは分厚い歯茎を突き破って出てくるため、生えて来る際には多少の痛みが伴います。親知らずの生えて来る位置や角度が悪く、隣の歯を押している場合にも痛みが出ます。また、一番奥の歯ですので、歯磨きが難しく、汚れが溜まりやすいために虫歯や歯周病が起こることがあります。
親知らずが引き起こしている痛みへの対処は、歯磨きの徹底と歯科の受診が必要で、抗炎症薬や抗菌薬が助けになる場合もあります。
親知らずの生え方により、痛みが起きやすく炎症を繰り返す場合は、抜歯が検討されます。抜歯は大学病院で行う場合もあり、若い年齢ほど回復が早い傾向があります。親知らずの痛みには早めのケアと治療が重要です。