永久歯の寿命はとても個人差が大きく、遺伝や生活習慣、メンテナンスを受けているかどうかでかなり変動します。永久歯の寿命を縮める要因や、永久歯を長もちさせる方法などについてご説明します。
目次
永久歯の寿命を延ばすためには?
永久歯の寿命を延ばして長もちさせるためには、歯の予防先進国といわれるスウェーデンでの取り組みが参考になります。
1.歯周病や虫歯を予防するという意識を持つ
スウェーデンや欧米諸国では、歯周病や虫歯を予防する「予防歯科」の考え方が浸透しています。日本でも予防歯科での定期健診などが徐々に浸透してきてはいますが、全ての人が予防歯科にかかっているかというと、まだまだその意識は低いといえるでしょう。
日本の保険制度は病気になってから治療のために医者に通うことを想定して作られているということが、予防歯科という考え方が浸透しにくい理由の一つでした。しかし、現在では保険適用で予防の処置が受けられるようになり、いよいよ「国民皆歯科健診」の制度が始まろうとしています。
2.歯の定期健診(クリーニング)を年に2~4回程度受ける
3〜6ヶ月ごとに歯科健診を受けることで、問題が早期に発見され、適切な治療が施されます。歯科医によるプロフェッショナルなクリーニング(スケーリングやポリッシング)は、家庭では取りきれない歯石やプラークを取り除くことができます。
定期健診の重要性
- 早期発見・・小さな虫歯や歯周病を早期に発見することで、進行を食い止めることが可能です。
- クリーニング・・日常のブラッシングでは取りきれない歯石やプラークを除去し、歯の健康を保ちます。
スウェーデン政府は1970年代に定期的な歯科医院の受診を国民に義務付けました。この取り組み前には3歳児で80%もの子供に虫歯が見られましたが、6年後には4%に抑えることに成功しています。
予防歯科で定期的に歯の状態をチェックし、専門の器機で歯のクリーニングを受けることは、歯周病や虫歯の予防に大いに役立つということが立証されました。
3.子供への予防歯科の受診を徹底させる
スウェーデンでは20歳になるまでは無料で歯科治療を受けることが出来るため、子供たちは全員が歯科のクリーニングやフッ素塗布などの予防措置を定期的に受けています。20歳以降の歯科の費用は有料になりますが、それでも大人の90%が予防歯科に通っています。子供の時の歯科に対する習慣がどれほど大切かお分かりいただけると思います。
4.歯ブラシ、歯磨き剤以外にも数種類のオーラルケアグッズを使う
スウェーデンや欧米諸国での歯のセルフケアは、歯ブラシ以外にもデンタルフロスやデンタルリンスが使われています。歯ブラシだけではお口全体の汚れの6割程度しか落とせないが、デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシでのケアを加えると8割程度の汚れを落とせるといわれます。残りの2割は歯科医院での定期健診(クリーニング)できれいにすることが出来ます。
5.虫歯や歯周病になりにくい生活習慣に変える
食後はお口の中が酸性に傾いており、歯の表面のエナメル質が溶けやすい状態になります。しょっちゅうお口の中に食べ物が入っていると、歯が溶けやすい状態が続きますので、予防歯科の観点からいうと、食事やおやつの時間を決めて、規則正しく食べることが必要になります。
6.バランスの取れた食事を摂る
健康な歯を保つためには、毎日の食事を栄養バランスの取れたものにすることが重要です。歯の健康の為に摂るべき栄養素は、カルシウム、ビタミンD、リンなどのミネラルやビタミンCです。これらを食事から十分に摂取することが歯の健康に役立ちます。
そのための食品としては、乳製品、魚、肉、野菜、果物などがあげられます。多様な食品をバランスよく摂るように心掛けましょう。
食生活の注意点
- カルシウム・・牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品を積極的に摂取することで、歯を強化します。
- 糖分の摂取を控える・・砂糖は虫歯の原因となりやすいため、甘い食べ物や飲み物を控え、摂取した後はすぐに歯を磨くか、水で口をゆすぐことが推奨されます。
7. 禁煙する
タバコにはニコチンやタールなどの多くの有害物質が含まれます。これらの化学物質は歯周病や口内のがんなど、お口の健康にリスクをもたらします。特に喫煙によって血行が悪くなり、免疫力が低下するため、歯ぐきの炎症が進みやすくなり、歯周病のリスクが高まります。歯を長持ちさせるためには、禁煙が必要です。
喫煙の影響:
- 歯周病のリスク増加・・喫煙は歯茎の血流を減少させ、歯周病を悪化させる原因となります。
- 治癒力の低下・・喫煙者は口内の治癒力が低下するため、治療後の回復が遅くなります。
8. ストレスを管理する
ストレスは歯の健康に悪影響を与える可能性があります。ストレスによる歯への影響としては、咬み合わせが変わったり、歯ぎしりや食いしばりを起こすことがあります。これらの状態は歯に負担をかけ、歯をすり減らして知覚過敏を起こしたり、詰め物や被せ物を破損する原因になることがあります。
日々のストレスを適切に緩和する方法を見つけてリラックスする時間を作ることが重要です。
20本以上の永久歯を保っている中高年はどのくらいいるの?
平成28年に厚生労働省が調べた歯科疾患実態調査結果によると、20本以上の歯を有する中高年の方の割合は以下の表のようになっています。
調査によると50~60歳前後から歯を失う方が増えてくるため、その年代の方は特に歯科医院の定期健診(メンテナンス)で歯周病や虫歯の予防につとめることが大切です。中高年の方が歯を失う原因は歯周病、虫歯、破損ですので、これらを防ぐことが永久歯の長もちに繋がります。
永久歯の寿命を短くする3つの要因
永久歯の寿命が短くなる要因は主に以下の3つです。
- 歯周病
- 虫歯
- 破損
1.歯周病
歯周病はお口の中の歯周病菌が毒素を出し、歯茎に炎症を起こします。毒素によって歯周組織が破壊されていき、やがて歯を支える歯槽骨が溶かされて歯がグラグラになり、自然に抜けてしまいます。かなり進行するまでは自覚症状が少ないため、普段から歯科医院で定期健診を受けて歯周病にかかっていないかチェックし、予防していくことが大切です。
2.虫歯
虫歯菌が糖をエサに酸を出し、歯を溶かしていくのが虫歯です。歯の表面のエナメル質が溶けてしまうと、その下にある象牙質はやわらかいため、虫歯が進行しやすくなります。虫歯が象牙質の下にある歯髄(神経)に達すると、ズキズキと強い痛みを感じるようになり、神経を取る治療が必要になります。
虫歯の治療は、虫歯に冒された部分を削り取って詰め物や被せ物をしますが、保険の銀歯は詰め物・被せ物の下で二次虫歯を起こしやすいため、丁寧な歯磨きやフッ素による虫歯の予防が必要です。
進行した虫歯は被せ物による治療が出来ないこともあり、その場合は抜歯になります。虫歯予防のためには歯科医院での定期健診も重要です。
3.破損
スポーツや事故での衝突によって歯が強い衝撃を受けると、歯が割れたり欠けたりしてしまうことがあります。歯の根にダメージが及ぶと、抜歯というケースも少なくありません。
永久歯の寿命を延ばすに関するQ&A
調査によると、50~60歳前後から歯を失う方が増えてくる傾向があります。特にこの年代の方は、定期的な歯科医院の健診(メンテナンス)を受けることが重要です。歯周病や虫歯の予防に取り組むことが永久歯の長持ちに繋がります。
永久歯の寿命を延ばすためには以下の点が重要です。
1. 歯周病や虫歯の予防意識を持つこと。
2. 歯の定期的な健診(クリーニング)を受けること。
3. 子供の予防歯科の受診を徹底させること。
4. 歯ブラシやデンタルグッズを使った適切なオーラルケアを行うこと。
5. 虫歯や歯周病になりにくい生活習慣を身につけること。
スウェーデンでは予防歯科の考え方が浸透しており、定期的な歯科医院の受診を国民に義務付けています。予防歯科での定期健診やクリーニングの取り組みにより、虫歯や歯周病の発生率を大幅に減少させています。
まとめ
永久歯の寿命を延ばすためには、予防歯科という考え方が大変重要になります。毎日の歯磨きなどのセルフケアに加えて、定期的に歯医者にクリーニング(定期健診)に通うというものです。
それに加えて、歯磨きの習慣や、よく噛んで食べる習慣、食事やおやつの時間を決めてダラダラ食べない等の生活習慣が永久歯の寿命を延ばす要因となります。