歯が痛い場合、虫歯以外にもさまざまな原因で歯が痛むことがあります。例えば、知覚過敏や歯の割れ、歯周病などです。これらの痛みは、虫歯とは異なる症状や原因によりますが、放置しておくとさらに悪化することもあります。虫歯以外で歯が痛む理由とその対処法についてご説明します。
虫歯以外で歯が痛む原因
歯の痛みは虫歯が主な原因と考えられがちですが、実際には虫歯以外にもさまざまな要因で歯が痛むことがあります。これらの痛みは「非歯原性歯痛」と呼ばれ、歯の痛み全体の約10%を占めるとされています。
1. 歯そのものが原因の痛み
歯自体に問題が生じて痛みを引き起こす場合があります。主な原因は以下のとおりです。
1. 歯髄炎
歯の内部にある神経(歯髄)が炎症を起こす状態です。虫歯の進行や外傷が原因で発症し、冷たいものや温かいものに敏感になることがあります。進行するとズキズキとした持続的な痛みを感じることがあります。
2. 知覚過敏
歯の表面のエナメル質が摩耗したり、歯茎が下がったりすることで、象牙質が露出し、外部刺激に対して敏感になる状態です。冷たい飲食物や歯磨き時に痛みを感じることがあります。
✔︎冷たいものなどが歯から離れれば痛みも収まる
✔︎歯ぐきが下がって歯が伸びたように感じる
✔︎叩いても痛まない
これらに当てはまる場合は知覚過敏が原因である可能性が高いでしょう。
知覚過敏は歯茎が下がったり歯が摩耗し、歯のエナメル質の内側にある「象牙質」が露出すると起こります。象牙質が露出すると、熱いものや冷たいものなど、外部からの刺激が歯の神経に伝わりやすくなり、痛みを感じやすくなります。これが知覚過敏です。
また歯の根元部分にはエナメル質がなく、全て象牙質でできています。そのため加齢などにより歯茎が下がると象牙質が露出し、同様に知覚過敏の原因となります。
知覚過敏は、歯科医院で知覚過用の薬を塗ってもらうか歯磨き方法の見直しでも痛みが和らぐことがあります。
3. 歯根膜炎
歯を支える組織である歯根膜が炎症を起こす状態です。噛んだときに痛みを感じたり、歯が浮いたような感覚を持つことがあります。
4. 歯のひび割れ
過度な噛み締めや外傷により、歯にひびが入ることがあります。ひび割れが深い場合、痛みを感じることがあります。
✔︎転倒やスポーツなどにより歯を強く打った
✔︎神経の治療をした歯が痛む
✔︎噛んだときに違和感がある
これらに当てはまる場合は歯が割れていることが原因である可能性が高いでしょう。
歯に割れ目ができるとそこから細菌が入り込み、痛みや炎症を引き起こすことがあります。歯の根っこ部分が割れた場合は抜歯しなくてはならないことも。歯の割れ目が小さいと判別が難しく、知覚過敏と判断されてしまうこともあります。
歯科医院で診てもらい、正しい治療を受けることが痛みを抑える近道です。
2. 歯周組織が原因の痛み
歯を支える組織に問題が生じて痛みを引き起こす場合があります。主な原因は以下のとおりです。
1. 歯肉炎
歯茎に炎症が起こる状態で、歯垢の蓄積が主な原因です。歯茎の腫れや出血が見られ、痛みを伴うことがあります。
2. 歯周病
歯を支える骨(歯槽骨)が破壊される病気で、進行すると歯がぐらつき、痛みを感じることがあります。歯肉炎から進行することが多く、早期発見と治療が重要です。
✔︎歯茎が腫れている・赤い
✔︎歯磨きのときに出血する
✔︎歯がうずくような感じがする
✔︎歯が揺れている
これらに当てはまる場合は、歯周病が原因である可能性が高いでしょう。
3. 親知らずの炎症(智歯周囲炎)
親知らずの周囲に炎症が起こる状態で、歯茎の腫れや痛みを引き起こします。親知らずの生え方や清掃状態が影響します。
3. 噛み合わせや習慣が原因の痛み
日常の習慣や噛み合わせの問題が原因で痛みを引き起こす場合があります。主な原因は以下のとおりです。
1. 咬合性外傷
歯ぎしりや食いしばりなどにより、歯や歯周組織に過度な力が加わることで、痛みや歯の損傷を引き起こす状態です。
2. 不正咬合
噛み合わせの異常により、特定の歯に過度な負担がかかり、痛みを感じることがあります。矯正治療が必要な場合もあります。
4. 口腔外の要因が原因の痛み
口腔内に問題がなくても、他の部位の疾患や状態が原因で歯の痛みを感じることがあります。主な原因は以下のとおりです。
1. 上顎洞炎(副鼻腔炎)
上顎の副鼻腔に炎症が起こると、上の奥歯に圧迫感や痛みを感じることがあります。鼻詰まりや頭痛を伴うことが多いです。
2. 三叉神経痛
顔面の感覚を司る三叉神経が刺激されることで、顔や歯に鋭い痛みを感じることがあります。突然の激しい痛みが特徴です。
3. 心臓性歯痛
狭心症や心筋梗塞などの心臓の疾患が原因で、左側の歯や顎に痛みを感じることがあります。胸の痛みを伴うことが多いです。
5. 精神的要因が原因の痛み
ストレスや心理的な要因が原因で、実際には問題がないのに歯の痛みを感じることがあります。主な原因は以下のとおりです。
1. 心因性歯痛
心因性歯痛の特徴は、通常の歯科的治療では改善しないことが多い点です。このような場合、歯科医療だけでなく、心療内科や精神科での相談が必要になることがあります。ストレス管理や適切なカウンセリングが症状の軽減に役立つことがあります。
6. 虫歯以外の歯の痛みへの対処法
歯が痛む原因が虫歯以外の場合、その対処法は原因に応じて異なります。以下に主な対応策を挙げます。
1. 原因の特定
まずは歯科医院で精密検査を受け、痛みの原因を特定することが最優先です。特にレントゲンやCTスキャンなどの画像診断が役立ちます。
2. 歯磨きの徹底
歯垢や歯石が原因の歯肉炎や歯周病には、日々の歯磨きを丁寧に行い、定期的な健診を受けることが重要です。歯科医師の指導のもと、正しい歯磨き方法を習得しましょう。
3. ストレス管理
心因性歯痛やストレスによる食いしばり・歯ぎしりには、ストレスの原因を取り除くことが重要です。リラクゼーションや十分な睡眠を心掛けましょう。
4. マウスピースの使用
噛み締めや歯ぎしりが原因の場合、ナイトガードやマウスピースを装着することで歯や顎への負担を軽減できます。
5. 歯科以外の診療科への相談
三叉神経痛や心臓性歯痛、上顎洞炎などの症状が疑われる場合、神経内科、耳鼻科、循環器科などの専門医を受診することが必要です。
6. 抜歯や治療の検討
智歯周囲炎や歯のひび割れが原因の場合、抜歯や修復治療を行うことで症状が改善します。患者さん一人ひとりに適した治療法を歯科医師と相談しながら選択しましょう。
7. 日常生活での予防策
虫歯以外で歯が痛む原因を予防するためには、日常生活の中で以下の点を意識することが大切です。
1. 適切なオーラルケア
毎日の歯磨きだけでなく、フロスや歯間ブラシを使用して口腔内を清潔に保つことが重要です。歯垢を残さないよう、食後のケアを徹底しましょう。
2. 定期健診の受診
痛みがなくても定期的に歯科医院を訪れ、健診を受けることで早期発見・早期治療につながります。
3. 噛み合わせの確認
食事中に違和感を感じたら、早めに歯科医師に相談し、不正咬合や被せ物の調整が必要かどうか確認しましょう。
4. ストレスの軽減
趣味や運動を通じてストレスを軽減し、食いしばりや歯ぎしりを防ぎましょう。
5. 適切な食生活
歯や歯周組織の健康を保つために、カルシウムやビタミンDを含むバランスの取れた食事を心掛けることも効果的です。
歯が痛いときの対処法は?
自己判断せず歯科医院で診てもらいましょう。放っておくとかえって悪化することもあります。
知覚過敏については、知覚過敏用の歯磨き粉で症状が落ち着くこともあります。実際に効果があった患者さんもいらっしゃいます。しかし虫歯や歯周病であればなおさら、基本的に放っておいて治るものはありません。
その痛みの原因はどこにあるのか・・・放っておいている間に進行し重症化してしまわないよう、歯科医院で一度診てもらいましょう。
まとめ
歯が痛い=虫歯と思いがちですが、虫歯でなくても歯は痛むことがあります。自己判断せず、なるべく早く歯科医院で診てもらうことをおすすめします。