よくあるご質問
矯正歯科

歯周病の治療中でもマウスピース矯正はできますか?

歯周病の治療中でもマウスピース矯正はできますか?

歯周病の治療中でもマウスピース矯正で治療はできますか?

結論として、歯周病の状態がコントロールされていれば、マウスピース矯正は可能です。しかし、炎症が続いている段階で歯を動かすと、歯を支える骨をさらに失う危険があり、治療計画そのものが大きく変わります。そのため、矯正前に「歯周病の安定化」が欠かせません。

■この記事はこんな方に向いています

  • 歯周病治療を進めながら矯正を検討している
  • 年齢的に矯正は難しいかもしれないと感じている
  • 歯ぐきが下がってきているのにマウスピース矯正ができるか不安
  • 矯正したいけれど、歯の寿命を縮めないか心配している

■この記事を読むとわかること

  1. 歯周病治療中でもマウスピース矯正が可能か
  2. 治療開始の「判断基準」
  3. 歯周病の人が矯正中に気をつけたいポイント
  4. 歯ぐきの状態と矯正のリスク
  5. 歯周病の患者さん特有の矯正のメリット・注意点

 

歯周病の治療中でもマウスピース矯正はできますか?

歯周病が治療によって「炎症が落ち着いて安定した状態」にあるかどうかで判断が大きく変わります。歯ぐきが腫れていたり、出血が続いたり、歯を支える骨が不安定な状態では、矯正の力に歯が耐えられず、歯の揺れや歯ぐきの退縮が進む可能性があります。

一方で、歯周病が安定していれば、マウスピース矯正は十分に可能であり、むしろ清掃性が高まることで歯周病管理の助けになることもあります。

炎症が安定していれば矯正できる。

マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正に比べて力が比較的コントロールしやすいため、歯周病を経験した患者さんとの相性がよい治療法です。歯周病治療の効果が出て、歯ぐきの状態が落ち着いていると判断されれば、矯正を同時進行で行うことも可能です。

ただし、歯周病治療が不十分なまま矯正を開始するのは危険です。歯を支える骨が弱っていると、通常よりも歯が揺れやすく、治療後に後戻りするリスクも高まります。歯科医師は、歯周病の進行度・骨の量・炎症の有無を慎重に診断したうえで、矯正開始の可否を判断します。

なぜ歯周病があると矯正前に治療が必要なのですか?

歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきがダメージを受ける病気です。矯正治療は歯を動かす工程のため、これらの組織が弱っている状態で力を加えると問題が起こりやすくなります。特に、骨が減っている場合は慎重な計画が必要で、炎症が残っている状態では矯正を始めるべきではありません。

弱った組織に矯正力を加えると危険。

歯周病は、歯と骨の関係を根本から揺るがす病気です。矯正治療の力は本来、健康な歯周組織であれば適切に受け止められ、安全に歯を動かすことができます。しかし、炎症によって骨が溶けていたり、歯ぐきが傷んでいたりすると、矯正力の負担に耐えきれません。

そのため歯科医師は、以下の点を確認します。

  1. 歯ぐきの赤みが改善しているか
  2. 歯周ポケットの深さが減少しているか
  3. 歯垢の付着が少なく、歯磨きの状態が安定しているか
  4. 出血の有無
  5. 骨吸収(骨が減っている量)がどの程度か

こうした確認が整い、歯周病が「安定期」に入ったと判断されれば、矯正は可能になります。ここでのポイントは、「歯を動かす前に、動かしても大丈夫な環境を整えることが大事」という考え方です。

歯周病治療中にマウスピース矯正を進める場合、どのタイミングで開始できるのですか?

矯正開始の基準は「炎症がない状態で安定維持できているか」。歯周病治療で症状が改善しても、十分に定着していない段階では再発しやすく、矯正計画が狂うこともあります。継続的なメンテナンスが必須で、歯科医師による診断をもとに開始時期を決めます。

炎症が落ち着き安定してから開始。

矯正を始める具体的なタイミングとしては次のような状態が整った時です。

  1. 矯正を開始してよい状態の例
  2. 歯ぐきの腫れがない
  3. 歯周ポケットが改善している
  4. 出血がほぼ消えている
  5. 毎日の歯磨き状態が安定し、歯垢の量が少ない
  6. 定期的なメンテナンス(1〜3ヶ月)が継続できている

これらが揃うことで、矯正中のトラブルを避けやすくなります。

マウスピース矯正は着脱できるため、清掃が簡単で、歯周病を抱えた患者さんにとって大きな利点になります。炎症が落ち着いたタイミングをうまく見極めれば、歯周病管理と矯正治療を両立させることができます。

矯正開始の目安

歯周病の状態 歯ぐきの症状 歯科医の判断 マウスピース矯正は可能? 理由
炎症が強い活動期 腫れ・出血・痛み・歯垢が多い 治療を優先 できない 歯を支える組織が不安定で、矯正力に耐えられない
改善し始めた回復期 腫れが減少、出血が一部残る 状態を観察しながら治療継続 慎重に判断 再発リスクが高く、矯正計画が不安定になりやすい
炎症が落ち着いた安定期 腫れなし、出血なし、歯垢が少ない 矯正開始の検討が可能 できる 組織が安定し、マウスピースの弱い力で安全に治療できる
長期的に安定している維持期 良好なセルフケア、定期メンテナンス継続 矯正計画を積極的に進められる 非常に適している 清掃性が高く、歯周病予防と矯正効果の両立がしやすい

この表から分かるように、矯正が可能かどうかは 「歯周病の安定度」 が最重要ポイントです。特にマウスピース矯正は弱い力で歯を動かせるため、炎症が落ち着いていれば非常に相性の良い治療になります。

歯周病治療を進めながら矯正を考える患者さんは少なくありませんが、矯正開始のタイミングを誤らなければ、歯ぐきへの負担を最小限に抑えながら治療を両立できます。

歯周病がある人がマウスピース矯正をすると、どんなリスクが考えられますか?

歯周病経験者は、通常よりも歯が揺れやすい・歯ぐきが下がりやすい・治療後の後戻りが起こりやすいなどのリスクがあります。ただし、適切な診断と計画があれば安全に治療が可能です。

歯の動きの安定性が低い。

マウスピース矯正の主なリスク

  1. 歯が揺れやすい
    → 骨の量が少ないと、矯正力により歯が過度に動くことがあります。
  2. 歯ぐきが下がりやすい
    → 歯周組織が弱いと、歯が動く過程で歯ぐきが退縮し、歯の根が見えやすくなります。
  3. 治療後の後戻りが発生しやすい
    → 支えが弱いため、矯正が終わった後も歯が元の位置に戻ろうとする力が強く働きます。
  4. 矯正計画に制限が生じる
    → 大きく動かす治療は避け、細かく少しずつ動かす必要があります。

総括すると、歯周病の影響で歯の安定性が低下しているため、治療計画はより慎重に立てられるべきだという点が重要です。しかしこれは「矯正ができない」という意味ではありません。むしろ、マウスピース矯正の細かな力のコントロールが、歯周病の患者さんに向いていると言えます。

歯周病の患者さんがマウスピース矯正を行うメリットはありますか?

マウスピース矯正は取り外せるため、歯磨きしやすくお口の中を清潔に保つことが出来ます。歯並びが整えば、将来的な歯周病予防にもつながり、歯の寿命を延ばす効果も期待できます。

お口の中を清潔に保つことが出来るため歯周病の再発予防に役立つ。

主なメリット

  1. 歯磨きしやすい
    → ワイヤー矯正と違い着脱できるため、歯垢が残りにくく管理しやすい。
  2. 歯周病リスクの軽減
    → 歯並びが整うことで汚れが溜まりにくくなる。
  3. 痛みや負担が少ない
    → 弱い力で少しずつ動かすため、歯周病経験者に向いている。
  4. 炎症の再発を抑えながら治療できる
    → 清掃性が高まることで全体の予防効果が上がる。

総括すると、「歯周病治療の延長線上に矯正治療がある」という感覚に近いメリットです。歯ぐきを守りながら歯並びを改善することは、長期的な口腔健康に直結します。

矯正中に歯周病を悪化させないためにできることは?

  1. 毎日の歯磨きをより丁寧に行う
    → 歯垢が残ると炎症が再発しやすいため、矯正中こそ清掃が重要。
  2. マウスピースを清潔に保つ
    → 汚れたまま装着すると細菌が増えやすく再発の原因になる。
  3. 定期メンテナンスを必ず受ける
    → 歯周病の安定性を保ちつつ、矯正の進行状況も確認するため必須。
  4. 力を加える治療ステップを細かく設定する
    → 骨の状態に合わせ、歯科医師が慎重に力を調整する。
  5. 夜間の食いしばりがある場合は対策を行う
    → 過度な力が歯周組織を傷めるため、マウスピース外での力の管理が重要。

矯正は歯に力を加える治療です。歯周病と矯正を両立させるには、「歯ぐきを安定させる習慣」と「歯に過剰な負担をかけない工夫」が欠かせません。患者さんと歯科医師が同じ方向を見て治療を進めることで、リスクを最小限に抑えられます。

歯周病治療とマウスピース矯正を併行する際、医院はどんな点に注意して診断しているのですか?

歯科医師は次のような視点で診断します。

  • 歯を守るために動かすのか、それとも動かすことで歯を守れるのかを見極める視点
    → 歯並び改善が最終ゴールではなく、歯の寿命を延ばす手段として矯正を捉える。
  • “今”だけでなく“10年後の歯の姿”をイメージする
    → 歯周病経験者は、治療しながら未来の歯の安定性まで考える必要がある。
  • マウスピースの利点を最大化する治療計画の構築
    → 弱い力で細かく動かす、治療期間を短く区切るなど、オーダーメイドで計画する。

こうした判断基準は、一見すると地味ですが、患者さんの歯を長く守るうえで非常に重要な哲学です。

高齢の患者さんや骨が減っている患者さんでも治療はできますか?

結論として、年齢だけで矯正を諦める必要はありません。骨の量は重要な判断材料ですが、マウスピース矯正は弱い力で動かせるため、高齢の患者さんに適した治療になることも多いです。

大切なのは以下の点です。

  • 骨の状態が安定しているか
  • 日常のケアが十分にできるか
  • 医院のメンテナンスを継続できるか

これらが整えば、高齢だからという理由で矯正が不可能になるわけではありません。

歯周病がある方に向けた“矯正を始める前のチェックリスト”

  1. 歯ぐきに腫れはないか
  2. 歯磨きは十分にできているか
  3. 出血はないか
  4. 歯科医院でのメンテナンスを続けられるか
  5. マウスピースの装着時間を確保できるか
  6. 将来の歯の健康を考えて治療に取り組めるか

このチェックは、治療の成功率を高めるうえで非常に有効です。

まとめ

歯周病治療中であっても、状態が安定していればマウスピース矯正は可能です。矯正は歯の見た目だけでなく、清掃性や咬み合わせの改善を通して、歯周病の再発を防ぐ力にもなります。

ただし、治療開始の前には、歯ぐきの炎症が落ち着いていること、メンテナンスが続けられることなど、いくつかの重要な条件があります。これらを満たしつつ、歯科医師と患者さんが協力して取り組むことで、安全に治療を進めることができます。

矯正は単なる見た目の改善ではなく、「歯の寿命を延ばすための選択肢」として大きな価値を持ちます。歯周病があるからこそ、歯並びを整えることが未来の健康につながることも多いのです。

関連ページ:まつもと歯科の歯周病治療

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科吹田本院
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医日本歯周病学会

▶プロフィールを見る
▶吹田の歯医者なら「まつもと歯科」