食事内容は歯垢や歯石の形成に大きく関わっています。糖分の多い食べ物は歯垢の生成を促進し、歯石の元を作ります。一方で、生野菜や果物のように食物繊維を含む食品は、唾液の分泌を促し、自然に歯の汚れを取り除く助けとなります。歯石と食べ物の関係について、予防に役立つ食事の工夫などをご紹介します。
目次
歯石の形成メカニズム
歯石は、歯の表面に蓄積した歯垢(プラーク)が硬化してできるものです。歯垢は、食べ物の残りかすや唾液中のタンパク質、細菌が混ざり合ったもので、特に糖分を含む食べ物や飲み物を摂取した後に歯の表面に付着します。歯垢が除去されないまま放置されると、唾液中のカルシウムやリン酸と結合して硬化し、歯石となります。歯石は一度形成されると、通常の歯磨きでは除去できず、歯科医院でのクリーニングが必要です。
歯石は歯垢が基盤となって形成されます
- 歯垢は主に食べ物の糖分をエサにして増殖する細菌の塊です。
- 特に糖分や炭水化物を多く含む食品が歯垢の生成を助けます。
歯垢が長時間除去されないと、唾液中のミネラルと結合し硬化し、歯石になります。
糖分と歯垢の関係
糖分を多く含む食品は、歯垢の形成に大きく影響を与えます。特に、砂糖や精製された炭水化物(白パン、クッキー、ケーキなど)は口の中で酸を生成しやすく、細菌が増殖しやすくなります。これにより、歯垢がより多く形成され、結果的に歯石の元となります。歯垢が長時間口の中に残ると、唾液中のミネラルと結びついて歯石を作りやすくなるため、糖分を多く含む食事が続くと歯石の形成が促進されます。
食物繊維と歯の健康
一方、食物繊維を多く含む食品、特に生の野菜や果物は、口の中の汚れを自然に除去する作用があります。これらの食品を噛むことによって唾液の分泌が促進され、唾液が歯垢を洗い流す役割を果たします。例えば、リンゴやニンジンのような硬めの食べ物は、咀嚼する過程で歯の表面を物理的に掃除する効果があり、歯垢の蓄積を防ぐことができます。
カルシウムと歯石の関係
カルシウムは歯の健康に欠かせない成分ですが、歯石の形成においても重要な役割を果たします。唾液中のカルシウムは、歯のエナメル質を修復する助けをしますが、同時に歯垢に蓄積されると硬化し、歯石を作る原因となります。そのため、カルシウムを多く含む食べ物(乳製品など)を摂取しつつ、定期的に歯の清掃を行うことが大切です。適度なカルシウムの摂取は、歯の強化には役立ちますが、口腔ケアを怠ると歯石の原因にもなり得ます。
酸性の飲食物の影響
酸性の飲食物(炭酸飲料、柑橘類、酢を使った食品など)は、歯の表面のエナメル質を軟化させ、細菌が歯に付着しやすくします。これにより、歯垢が蓄積しやすくなるため、歯石の形成リスクも高まります。特に、酸性の飲み物を頻繁に摂取することは、歯石の生成を加速させる一因となります。
歯石は食べ物を食べなければつかない?
食べ物を食べなくても歯垢(プラーク)はつきます。お口の中に元々いる細菌たちのせいです。それらと唾液が合わさって石灰化し、固まったのが歯石です。ゆえに食べ物を食べなくても、歯石はつきます。
例えば胃ろうなど、管を通して栄養を身体に送っている方(=経管栄養)でも、お口の中は汚れます。むしろ口から食べ物を食べることで唾液が多く分泌され、細菌が洗い流されるなど自浄作用が働きます。そのため口から食べ物を取っていない方ほど汚れやすいといっても過言ではありません。
経管栄養とは
管を用いて胃に直接栄養を送ることをいう。栄養は、食事によって口からとるのが最良であるが、舌、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、食道に疾患があって嚥下(えんげ)運動に障害のある患者、口腔(こうくう)や食道の手術後で手術部位を清潔かつ安静に保ちたい患者、意識不明、拒食症の患者などにはこの方法を用いる。管は一般には鼻腔または口腔を経るが、直接、胃や小腸内に挿入する方法もある。
引用 コトバンク
食後どれくらいで歯石になる?
食べ物を食べた直後は、歯に汚れがついているようには見えません。歯垢(プラーク)は、食べ物を食べた後およそ4~8時間ほどで作られます。
歯磨きをしなかったり歯磨きしても磨き残しがあったりすると、その歯垢(プラーク)は歯石となり固まってしまいます。歯垢〜歯石になるまでの時間はおよそ48〜72時間。2〜3日ですね。
2〜3日間歯磨きしないという方は少ないと思いますが、歯磨きの癖や磨き残しやすい場所があれば、知らぬ間に2〜3日放置されて歯石となります。歯磨きの癖や磨き残しをなくすためには、歯医者で歯科衛生士に歯磨き方法を習うのが一番です。
歯石を取ると食べ物がはさまりやすくなる?
歯医者で歯石を取ってもらったことにより、歯と歯の間に隙間ができることも。そうなると歯石を取る前よりも食べ物がはさまりやすくなりますよね。
そう思われる方もいると思います。しかし歯石は歯垢(プラーク)が固まったものであり、その歯垢(プラーク)は細菌の塊です。加えて、歯石自体も表面がザラザラしているため汚れが付きやすくなっています。また歯石の下に虫歯が隠れていることだってあります。
- お口の中の細菌数を減らす
- これ以上歯石をつかないようにする
- 治療を円滑に進める
歯周病・歯茎の腫れだけでなく、これらのためにも歯石を取ってもらうのは重要なことと言えます。
歯石形成を促進する食品
以下のような食品は、歯垢が増えたり歯石が出来やすくなる可能性があります。
糖分を多く含む食品
- チョコレートやキャンディーなどの甘いお菓子
- 炭酸飲料やジュースなどの砂糖が多い飲み物
粘着性の高い食品
- グミやキャラメルなど歯にくっつきやすいものは、細菌の温床になりやすい
精製された炭水化物
- 白米、パン、パスタなども口腔内で糖に変わり、歯垢の栄養源となります
歯石が出来るのを抑える食品
一方で、以下のような食品は歯垢や歯石の形成を抑える働きがあります。
- 繊維質の多い食品・・野菜や果物(例: セロリ、リンゴ)は、自然なブラッシング効果があり、歯垢を減少させます。
- 乳製品・・チーズやヨーグルトなど、カルシウムやリンが豊富な食品は唾液の生成を促し、口腔内のpHバランスを整えます。
- お茶類・・緑茶やウーロン茶に含まれるポリフェノールは細菌の繁殖を抑える効果があります。
歯石予防のための食事の工夫
歯石の予防には、日々の食事の工夫が役立ちます。以下のようなポイントに気を付けることで、歯垢の蓄積や歯石の形成を防ぐことができます。
- 糖分の摂取を控える・・砂糖を多く含む食品や飲み物の摂取を減らし、間食を控えることで、歯垢の形成を抑えます。
- 食物繊維を積極的に摂る・・硬めの野菜や果物を日常的に食べることで、自然な歯の清掃効果が得られます。
- 酸性の食品に注意する・・酸性の飲食物を摂取した後は、すぐに水で口をすすぐか、しばらくしてから歯磨きを行うと良いです。
- バランスの良い食事・・カルシウムやビタミンDを含む食品をバランスよく摂取し、歯の健康を保つことが重要です。
まとめ
歯石の形成には、食事内容や口腔ケアが大きく影響します。糖分の摂取を控え、食物繊維を多く含む食品を日常に取り入れることで、歯垢や歯石の蓄積を防ぐことができます。また、酸性の飲食物には注意し、摂取後は口をすすぐなどのケアを心がけましょう。
さらに、定期的な歯科健診で歯石の早期発見と除去を行うことが、健康な歯と歯茎を維持する鍵となります。バランスの取れた食事と適切なケアで、口腔内の健康を保ちましょう。