
子供の受け口(しゃくれ)の矯正に使われる「チンキャップ」は、成長期における顎の成長を抑制し、骨格のバランスを整えるための矯正装置です。チンキャップの仕組みや効果、メリットとデメリット、適切な使用時期についてご説明します。
子供の受け口矯正に使われる「チンキャップ」
多くの方にとってなじみが薄いであろう「チンキャップ」。検討するに当たって浮かんでくる疑問をまとめました。
チンキャップとは
チンキャップは、子供の受け口矯正に使われる装置です。

上図のように下あごに力がかかり、下あごの成長を抑制します。これにより、下あごが伸びるなど受け口が悪化するのを防ぎます。かみ合わせの状態などにより、他の矯正装置と同時に使用することもあります。
似たような装置に「上顎前方牽引装置」がありますが、これは下あごの成長を抑制しながら、上あごの成長を促進するもの。下あごの成長だけ抑制するのがチンキャップです。
チンキャップの実際の効果
チンキャップの効果については疑問視する意見もありますが、結果的に効果が得られ、受け口(しゃくれ)が治った方も多くいるのが事実です。歯科医院や歯科医師によっても賛否両論分かれるようですが、チンキャップを取り扱っている歯科医院さんは今も多くあります。
チンキャップの費用・値段
大阪矯正歯科グループのチンキャップの費用は15万円(+消費税)です。また他の矯正装置と併用して治療することも多いです。
チンキャップのメリット・デメリット
子供の受け口矯正に使うチンキャップは、使用が大変そうな装置に見えますが意外と使い勝手が良いそうです。そのため患者である子供さんが協力してくれることも多く、下あごの成長抑制の効果も高いのがメリットでしょう。
そうは言っても、身長や体重と同じであごの成長にも個人差があります。ゆえにチンキャップをつけたからと言って、必ず下あごの成長を抑えられるとは言い切れません。
あごの成長が終わるまで、チンキャップを毎日・24時間使用できれば下あごの成長は確実に抑えられるかもしれません。しかしこれでは見た目も気になりますし、現実的ではありませんよね。
メリット
- 顎の成長をコントロールするため、特に子供の成長期に効果的。
- 非侵襲的であり、手術の必要がない。
- 日常生活に大きな支障を与えずに治療を進められる。
デメリット
- 長時間の装着が必要なため、子供がしっかりと協力することが重要。
- 見た目の問題で子供が抵抗感を持つことがあるため、親のサポートが必要。
- 効果が現れるまでに時間がかかることがあり、忍耐が求められる。
チンキャップを使用する時期・時間
チンキャップはあごの成長が進行している時期に使用します。あごの成長が盛んなのは9〜15歳くらい、小学校中学年〜中学3年生くらいまでの時期です。子供の受け口矯正では、この時期にチンキャップが使用されることが多いようです。
チンキャップの使用は、見た目もあるので基本的にお家にいるときです。
チンキャップの効果を最大限に引き出すためには、一般的には12〜14時間以上の装着が推奨されますが、治療計画に応じて異なることもあるため、主治医の指示を守りましょう。
年齢とチンキャップの使用効果
チンキャップは、特に成長期の子供に対して顎の成長をコントロールするために使用されますが、成長が終わった後では効果が薄くなることがあります。
チンキャップの仕組み
チンキャップは、顎につけるチンキャップ・頭につけるヘッドキャップ・ゴムバンドの3つから成っています。

全体の形に種類はありますが、いずれも目的や効果は同じです。ゴムバンドの調整や交換によって、チンキャップ部分に力をかけ、ヘッドキャップ方向に引っ張っていきます。
チンキャップは大人でも使用できる?

あごの成長が終わるのは女性で18歳ごろ、男性で25歳ごろと言われています。しかしチンキャップはあごの成長が活発なときに使用するもので、それは9〜15歳ごろです。あごの成長が終わっている大人には効果が期待できないため、大人にチンキャップが使用されることはありません。
大人になってからの受け口(しゃくれ)矯正は、ワイヤー矯正や場合によっては抜歯、手術が必要となってきます。


チンキャップが大人の治療には使われない理由
チンキャップが大人に使用されない主な理由は、以下の通りです。
- 大人は骨の成長が完了しているため効果が薄い
- 骨格的な問題には外科的治療が必要な場合がある
- 見た目や装着感の面で大人には適さない
- 他の矯正装置で代替治療が可能
1. 大人は骨の成長が完了しているため効果が薄い
チンキャップの主な目的は、下顎の過剰な成長を抑制することや、上顎と下顎の成長バランスを整えることです。この効果は、成長期にある子どもや思春期の患者さんに有効で、骨の成長が活発な時期に治療を行うことで矯正の効果が期待できます。
しかし、大人の場合、骨の成長がすでに完了しているため、チンキャップによる成長の調整効果が得られません。そのため、大人に対しては効果的な治療方法とはいえません。
2. 骨格的な問題の治療には外科的治療が必要な場合が多い
大人の場合、下顎や上顎の骨格に関する問題を矯正するためには、矯正装置だけでは十分な結果が得られないことがあります。骨格の不調和が大きい場合、外科的矯正手術(顎変形症手術)を併用することで、根本的な改善が可能です。このため、チンキャップのような装置だけで対応するのではなく、包括的な治療計画が必要とされます。
3. 見た目や装着感の面で大人には適さない
チンキャップは、頭部や下顎に固定する装置で、装着中は見た目に影響を与えることがあります。大人の患者さんは、矯正治療中の審美性を重視する傾向があるため、目立つ装置を避ける傾向があります。また、装着感が快適でない場合があり、日常生活での使用が難しいと感じる患者さんも多いです。このような理由から、大人には目立たない矯正方法(例:インビザラインや裏側矯正など)が選ばれることが一般的です。
4. 他の矯正装置で代替治療が可能
現代の矯正治療では、チンキャップを使用せずとも、他の矯正装置や治療法で効果的に歯列や咬合の問題を改善できるケースが多くなっています。例えば、インビザラインや固定式の矯正装置を使用して歯列を整えることが可能であり、大人の矯正治療ではこれらの方法が主流となっています。
大人の矯正治療では、患者さんのライフスタイルや審美的な要望に応じた治療法が選ばれるため、チンキャップの必要性が少なくなっています。適切な治療法は、矯正歯科医師と相談して決定することが重要です。
他の矯正方法との併用について
チンキャップは、単独で使用される場合もありますが、他の矯正治療(例えばワイヤー矯正やマウスピース矯正)と併用するケースもあります。他の矯正方法と組み合わせることで、受け口の矯正がより効果的になる場合があります。
まとめ

チンキャップは、成長期の子供における受け口矯正に効果的な装置であり、下顎の過成長を抑制する役割を担います。長時間の装着が求められるため、子供の理解と協力が必要で、親の励ましや支援が治療成功に繋がります。
適切な時期に使用することで、将来大人になってからの骨格矯正や外科矯正などの大掛かりな治療を回避できる可能性が高まります。主治医としっかり相談しながら、子供にとって最適な治療計画を立てましょう。