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子供の歯

小児矯正で使う拡大装置の役割と必要性を解説

小児矯正で使う拡大装置の役割と必要性を解説

まつもと歯科 理事長・総院長 松本 正洋

小児矯正の拡大装置の役割は?

子どもの顎の幅を広げ、将来の歯並びや噛み合わせを整えるために使われる装置です。

この記事はこんな方に向いています

  • 子どもの歯並びに不安があり、矯正を考えている保護者の方
  • 「拡大装置」と言われたが具体的に何をするのか知りたい方
  • 永久歯の生え変わりや顎の成長について理解を深めたい方

この記事を読むとわかること

  1. 拡大装置の基本的な役割と仕組み
  2. どんな子どもに拡大装置が必要になるのか
  3. 使用することで得られるメリットと注意点
  4. 保護者がサポートできるポイント

 

拡大装置はどんな役割があるの?

拡大装置は、子どもの上顎の幅を広げるために使う小児矯正の装置です。顎が狭いと永久歯が並びきれずに不正咬合が起きやすくなります。そのため成長期に装置を使い、顎を自然に広げることで、将来の歯並びを整える準備ができるのです。

拡大装置は、子どもの顎を広げて歯並びのスペースを確保する役割を持ちます。

なぜ子どもの時期に顎を広げる必要があるの?

子どもの顎は骨のつなぎ目(正中口蓋縫合)が柔らかく、広げやすい特徴があります。大人になると骨が固まり、外科手術をしなければ顎を広げられなくなります。そのため成長期に顎を広げることは、自然な発育を利用できる大きなチャンスなのです。

成長期は顎が柔らかく広げやすいため、小児期に装置を使うことが重要です。

どんなケースで拡大装置が必要になるの?

拡大装置はすべての子どもに必要なわけではありません。以下のようなケースで検討されます。

  1. 歯が重なって生えている(叢生)
    → 永久歯が並ぶスペースが不足しているケース。
  2. 上下の噛み合わせがずれている(交叉咬合)
    → 上顎が狭く、噛んだときに下の歯が外側に出てしまう。
  3. 鼻づまりや口呼吸が多い
    → 顎が狭いことで気道が狭くなることがある。

歯が並ぶスペース不足や噛み合わせのズレがある場合に拡大装置が使われます。

これらのケースでは、顎を広げることで歯並びが整うだけでなく、呼吸や発音にも良い影響が期待できます。

拡大装置を使うことで得られるメリットは?

拡大装置には歯並びの改善以外にも多くのメリットがあります。

  1. 永久歯が並ぶスペースを確保できる
    → 将来的に抜歯矯正のリスクを減らせる。
  2. 上下の噛み合わせを整えやすくなる
    → 噛む力が正しく伝わり、顎関節への負担が減る。
  3. 鼻腔や気道が広がり呼吸がしやすくなる
    → 口呼吸から鼻呼吸へ改善しやすい。
  4. 見た目のバランスも整いやすい
    → 横顔や笑顔の印象にも好影響。

拡大装置は歯並びだけでなく、噛み合わせ・呼吸・見た目にも良い効果をもたらします。

拡大床と急速拡大装置の違いとは?

拡大床とは?

  • 取り外し式の装置
    → 主に床(しょう)矯正とも呼ばれ、子どもが自分で取り外しできるタイプ。
  • ゆっくり広げる
    → ネジを少しずつ回して、数か月かけて顎の幅を拡大。
  • 適応年齢が広い
    → 乳歯と永久歯が混ざっている時期(混合歯列期)に使われることが多い。

メリット

  1. 食事や歯磨きのときに外せるため衛生管理がしやすい
  2. 痛みや違和感が比較的少ない

デメリット

  1. 装着時間を守らないと効果が出にくい(子どもの協力度が重要)
  2. 拡大スピードがゆるやかなので、骨ごとの拡大は難しく、歯の傾斜に頼ることも多い

急速拡大装置とは?

  1. 固定式の装置
    → 上顎の小臼歯と奥歯に金属製のバンドをつけ、口蓋(上顎の天井部分)に固定して使う。
  2. 短期間で広げる
    → 中央のネジを回し、数週間〜数か月で一気に顎を広げる。
  3. 骨ごと広がる
    → 成長期の柔らかい骨を利用して「正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)」を開き、骨格的に顎を広げられる。

メリット

  • 短期間で大きな効果が得られる
  • 歯だけでなく骨格的な拡大が可能
  • 呼吸の改善(口呼吸→鼻呼吸)にもつながりやすい

デメリット

  • 取り外しできないので歯磨きが難しい
  • 最初は違和感や発音のしづらさが出やすい
  • 効果が強力な分、痛みや圧迫感を伴うことがある

比較表

特徴 拡大床 急速拡大装置
装置のタイプ 取り外し式 固定式
拡大スピード ゆっくり(数か月〜1年以上) 急速(数週間〜数か月)
拡大の対象 ゆっくりと顎骨を拡大 顎骨ごと拡大(正中口蓋縫合の拡大)
清掃性 外して歯磨き可能 装置が固定されているので清掃困難
子どもの負担 装着時間を守れば負担は少なめ 効果は大きいが違和感・痛みが強い場合あり
保護者のサポート 装着管理のため、親の声かけが重要 清掃や健診時のチェックが重要
  • 拡大床は「取り外せてゆっくり広げる」装置。子どもの協力度がカギ。
  • 急速拡大装置は「固定して短期間で骨ごと広げる」装置。効果が大きく、いが管理が大変。

どちらも目的は「歯がきれいに並ぶスペースを確保すること」ですが、方法と適応が違います。歯科医師は子どもの年齢や顎の状態を見て、最適な装置を選びます。

使うときに注意することや親ができるサポートは?

拡大装置を使うには注意点もあります。子ども自身だけでなく、保護者のサポートが大切です。

  1. 食事の工夫
    → 固すぎる食べ物を避け、装置に食べ物が挟まらないようにする。
  2. 歯磨きのサポート
    → 装置の周囲に歯垢が溜まりやすいため、仕上げ磨きをして清潔を保つ。
  3. 定期的な通院
    → 装置の調整や歯の動きをチェックするため、歯科医院での健診が欠かせない。
  4. 子どもの不安をケア
    → 違和感や発音の変化に戸惑うことがあるので、声かけで安心させる。

食事・歯磨き・通院・心のケアなど、親のサポートが成功のカギです。

拡大装置は短期間で効果が出やすいですが、清潔管理や調整を怠ると虫歯や歯肉炎のリスクもあります。保護者が積極的にサポートしてあげることが、治療の成功につながります。

まとめ

拡大装置は将来の歯並びを守るための大切な役割

小児矯正で用いる拡大装置は、子どもの成長を利用して顎を広げ、歯並び・噛み合わせ・呼吸の改善に役立つ装置です。適切な時期に使うことで、将来の歯並びのトラブルを防ぎ、健康的な発育をサポートします。

拡大装置は子どもの歯と顎の健やかな成長を助ける重要な役割を持っています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科吹田本院
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医日本歯周病学会

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