今回は「子供の口臭の原因」について解説します。
子供の口臭の原因
1. 歯肉炎
特徴
歯肉炎とは、歯茎が炎症を起こしている状態です。大人がよく耳にする「歯周病」の初期段階が歯肉炎です。子供が歯周病まで進行することはほとんどありませんが、大人になってから後悔しないよう、今のうちから意識させましょう。
▼歯肉炎・歯周炎・歯周病の違いはこちらでまとめています。
https://www.matsumoto.or.jp/toothteeth/toothbrushing-pain/
歯肉炎は歯垢(プラーク)により起こります。つまり歯磨きで歯垢(プラーク)がしっかり落とせていれば、歯肉炎にはなりません。
歯肉炎は痛みがないので、大人がお口を見てあげないとわかりません。自覚がしにくい分進行しやすいです。歯茎が歯の形に沿って赤くなっていたり、歯磨きのときに血が出たりしていたら要注意です。
治し方
子供が歯磨きをしているのに歯肉炎になることもしばしばあります。それは、正しい方法で磨けていないから。私は大学病院に勤務していましたが、小児歯科でそのような子供をよく見かけました。一生懸命歯磨きを見せてくれるのですが、全然磨けていない・・・汚れ全然落ちてないよ・・・?なんて子はよくいます。
そのため「保護者による仕上げ磨き」が重要になってきます。口臭を予防するためにも、小学校3〜4年生くらいまでは、仕上げ磨きや隣で歯磨きを確認してあげましょう。
難しいようであれば、歯科医院へ一緒に行くのももちろん◎。保護者の方も一緒に正しい歯磨きを学ぶことができます。
子供たちは自宅での歯磨きだけでなく、歯医者での治療も嫌がることがほとんどです。そのような子たちに私たち歯科医師・歯科衛生士が行なっていたのは、「頑張った後のご褒美」です。
具体的にはガチャガチャ。はじめに「今日頑張ってくれたら、一緒にガチャガチャやりに行こう!」「頑張ってくれる人しかガチャガチャできないんだよ〜」などと声をかけます。すると「じゃあ頑張る!」「少しだけね頑張ってあげる!」などと応じてくれる子がほとんどでした。
私たち大人もつらい仕事の後、家事を頑張った後、自分で自分にご褒美を与えていませんか?それと同じで、子供も「頑張ればご褒美がもらえる!」と思えば協力してくれるものです。
2. 口呼吸
口呼吸は、口腔内が乾燥し、唾液の量が減少するため、口臭の原因となります。特に睡眠時に口を開けて呼吸する習慣がある子供は、口臭が発生しやすくなります。口呼吸の原因には、鼻詰まりやアレルギーが関連していることが多いため、鼻の通りを良くするための治療や生活習慣の見直しが必要です。
特徴
呼吸で正しいのは、鼻で行う鼻呼吸です。それが口で行う口呼吸になっていると、お口の中が乾燥することで口臭が起きます。またお口の中に細菌が入り込みやすくなるので、口臭だけでなく風邪や免疫力が下がる原因にもなり得ます。
治し方
まずは子供さんが口呼吸をしないか確認しましょう。
②唇が乾燥している
③唇を閉じさせるとあごにシワが寄るなど緊張している様子が見られる
④寝ているときにいびきをかく
1つでも当てはまれば、普段から口呼吸をしている可能性があります。
鼻で呼吸するよう伝えたり、寝るときに口に専用テープを貼ったりすることで口呼吸は治ります。口呼吸は癖になっていることが多いので、自覚させて口を閉じるよう意識させるだけでも治ります。
ただし注意しなければならないことが一点あります。例えば鼻がつまっているなど、原因があって口呼吸になっていることもあります。その場合は耳鼻科を受診しましょう。鼻づまりを治すことで口呼吸は治るでしょう。副鼻腔炎やアデノイドなども口呼吸の原因として考えられます。
副鼻腔炎とは
鼻の奥や副鼻腔などに起きる炎症。悪臭のある鼻汁や鼻詰まり、頭痛・発熱などの症状がみられる。
引用 コトバンク
アデノイドとは
5~10歳ぐらいに最も多くみられる。鼻咽腔が狭くなって鼻呼吸ができなくなり,鼻づまりのために,口をぽかんと開けてぼんやりした表情を呈することがある。
引用 コトバンク
3. 唾液の量が少ない
特徴
唾液の量が少ないと口臭が起きやすくなります。唾液は汚れを洗い流してくれたり、お口の中を潤したりする役割があります。またお口の中が乾燥することで細菌が元気になり、虫歯や歯肉炎のリスクも上がります。
唾液量の減少は、先ほどお伝えしたような口呼吸だけでなく、ものをよく噛まないことによっても起こります。ものを噛むことで唾液は分泌されます。
治し方
食事のときは1口20回噛むことを目標にさせましょう。よく噛まないと消化不良にもつながり、胃腸に負担がかかります。またこまめに水分を取らせるのも効果的です。
4. においの強いものを食べた
特徴
にんにくやネギ類が代表的ですね。これは大人でも起こる口臭です。仕方ありません。
治し方
歯磨きやうがいによって少し和らぎますが、食べ物による口臭は放っておけば自然と治ります。心配する必要はありません。
5. その他生理的なもの
特徴
生理的口臭とは、朝起きたときやお腹がすいたとき、緊張しているときに起こる口臭です。これも大人でも起こる口臭です。歯科医師でも歯科衛生士でも起こりうる口臭です。仕方ありません。
治し方
歯磨きをしたり、食事や水分を取ればすぐに口臭は収まります。心配する必要はありません。
6. 消化器系の問題
稀に、消化器系の問題が子供の口臭の原因になることがあります。胃の逆流や消化不良など、胃腸の状態が悪い場合、口臭が発生することがあります。こうした場合は、食事の内容を見直し、消化に良い食材を取り入れることが大切です。症状が続く場合は、医師に相談することをお勧めします。
7. ストレスと口臭
ストレスが原因で唾液の分泌が減少することも、口臭の一因となることがあります。子供は、学校や家庭でのストレスを抱えることがありますが、ストレスの影響で口臭が強くなることがあります。親として、子供の精神的なケアやサポートを行うことも、口臭予防の一環として重要です。
食生活と口臭の関係
子供の口臭の原因として、食生活の影響も考慮する必要があります。特に以下の点に注意が必要です。
糖分の多い食品や飲料
糖分の多いお菓子やジュースを頻繁に摂取することは、口腔内の細菌の繁殖を促し、口臭の原因になります。特に、夜間の間食やジュース摂取は、唾液の分泌が減少するため、口腔内に細菌が残りやすくなります。
強い香りのある食品
ニンニクや玉ねぎなど、強い香りを持つ食材は消化の過程でガスを生成し、息に影響を与えることがあります。これらの食品を摂取した後は、しっかりと歯磨きをすることが重要です。
水分不足と口臭
子供は活動が活発なため、水分不足に陥りやすいです。水分不足により唾液の分泌が減少し、口腔内の細菌を洗い流す力が弱くなります。その結果、口臭が発生しやすくなります。特に、朝起きたときに口臭が強く感じられる場合、水分補給が不十分である可能性があります。子供には定期的に水を飲ませ、適切な水分補給を心がけることが重要です。
子供の口臭が治らない場合は
歯科医院で診てもらいましょう。歯並びが悪いことにより汚れが溜まりやすかったり、口呼吸になりやすいなんてこともあります。
それでも口臭がなかなか収まらない場合は、消化器系など内臓に何か異常があるのかもしれません。小児科や内科などで診てもらいましょう。
子供の口臭の原因に関するQ&A
子供の口臭の原因はいくつかの要因によって引き起こされることがあります。以下に一般的な原因をいくつか挙げてみましょう。 1.正しい歯磨きやうがいが行われていないと、口内に食べかすや細菌が残り、臭いが発生することがあります。 2.食べ物の種類や食べ方も口臭の原因となることがあります。にんにくや玉ねぎなどの強い香りを持つ食べ物を摂ると、その成分が体内に吸収されて口臭を引き起こすことがあります。 3.歯茎の炎症や感染症である歯周病は、口臭の主要な原因となります。歯茎の炎症によって細菌が増殖し、臭いが発生します。 4.口内に感染症がある場合、その感染症が口臭の原因となることがあります。 5.口の中が十分な唾液で潤っていない場合、細菌の増殖が促進され、口臭が発生することがあります。 6.子供の場合、アデノイドや扁桃腺に問題があると、口臭が発生することがあります。 7.胃腸の問題や消化不良が口臭を引き起こすことがあります。 8.鼻呼吸がうまくいっていない場合、口を開けて呼吸することが口臭の原因になることがあります。
口呼吸を治したい場合は、鼻で呼吸するよう促し、夜間に専用テープを口に貼って口が開かないようにしたり、口を閉じる習慣をつけることで口呼吸を改善できます。鼻づまりの原因がある場合は耳鼻科を受診しましょう。
唾液不足は口臭や虫歯のリスクを高めます。食事時によく噛むことや水分を摂取することで唾液の分泌を促すことが重要です。
子供の口臭の原因まとめ
大人は自分の口臭に気づいたり、周りの視線を感じ取ったりすることができますが、子供は難しいです。とは言え、子供も口臭を指摘されて良い気はしません。子供の気持ちを考えながら、優しくフォローしてあげましょう。