
ホワイトニングでは、使われる過酸化物などの成分が歯の色素に働きかけることで白くなります。また、歯科医院やサロン、市販の製品では使用する薬剤や効果に違いがあります。ホワイトニングのメカニズムや具体的な手順、効果を増す方法についてご説明します。
ホワイトニングとは?

ホワイトニングとは、歯を漂白して見た目を明るくする治療法です。歯の表面や内部に蓄積した色素を分解し、元々の歯の自然な白さを引き出します。
種類
- オフィスホワイトニング(歯科医院で行う治療)
- ホームホワイトニング(自宅で行う方法)
- デュアルホワイトニング(上記2つを組み合わせた方法)
歯が着色して色が変わってしまう原因とは?
歯の色が暗くなる原因には以下のようなものがあります。
- 食べ物や飲み物(コーヒー、紅茶、赤ワインなど)
- 喫煙による着色
- 加齢によるエナメル質の薄れ
- 外傷や薬物(テトラサイクリン歯など)
これらの色素は歯の表面に付着するだけでなく、内部に染み込むことがあります。
ホワイトニングの原理・メカニズム

ホワイトニングは魅力的だけど、なぜ白くなるのでしょうか? 歯に負担がないか不安に思われる方はおられませんか?
ホワイトニングの化学的基礎
ホワイトニングの化学的基礎
ホワイトニングは、過酸化物(過酸化水素または過酸化尿素)を使用して色素分子を分解するプロセスです。以下にその反応の詳細を解説します。
使用薬剤
過酸化水素(H₂O₂)
- オフィスホワイトニングで主に使用。
- 高濃度(15%~40%)で短時間に効果を発揮する。
過酸化尿素(CH₆N₂O₃)
- ホームホワイトニングで使用。
- 過酸化水素と尿素に分解され、低濃度(10%~22%)で作用する。
化学反応
過酸化物が歯の表面に適用されると、次のような反応が進行します。
- 過酸化物が分解して活性酸素(O₂⁻、OH⁻)を生成。
- 活性酸素が着色分子(クロモフォア)の二重結合を切断。
- 分解された分子が透明な構造または色のない構造に変化。
具体的な化学式
- H₂O₂ → 2OH⁻(過酸化水素の分解)
- OH⁻ + 色素分子 → 無色分子(酸化反応による色素分解)
ホワイトニングで使われる成分
ホワイトニング材の成分
ホワイトニング材として臨床応用されているのは、オフィスホワイトニングに試用されている各種濃度の過酸化水素水、ホームホワイトニングに使用されている10%過酸化尿素、無髄歯の漂白法であるウォーキングブリーチに使用する過ホウ酸ナトリウムの3種です。
過酸化水素(H2O2)
過酸化水素は2.5~3.5%の濃度のもの(オキシドール)が消毒剤として使用されています。
過酸化水素は組織、細菌、血液、胆汁などに存在するカタラーゼ(Catalase)で分解され、フリーラジカルが発生します。
フリーラジカルには強い酸化力があり、細菌の構成成分に効果があります。
また、酸化力に基づく漂白作用・脱臭作用があり、歯のホワイトニングに応用されています。
なお、過酸化水素からフリーラジカルを多く発生させるには、
- 温度を上げる(歯科医院ではH2O2を温めて使用したりします)
- 光を当てる(歯科医院ではライトを当てて施術します)
- アルカリ性にする。金属触媒を添加する方法があります(クリスタル等)
ホワイトニングのメカニズムは過酸化物による有色物質の分解作用
フリーラジカルが有機性着色物質を分解して低分子の無色の物質となることにより漂白作用が発現します。
※フリーラジカルとは
不対電子(ふついでんし)をひとつ、または、それ以上もつ分子・原子
電子が足りないため、不安定で反応しやすい性質を言う。
なぜ歯そのものの色を白くできるの?
歯の表面にホワイトニング剤を塗ることにより、ホワイトニング剤やその成分が歯に浸透していきます。歯に浸透すると、歯そのものの色を決めている色素を分解していきます。これは化学反応によるもので、これがホワイトニングで歯が白くなる原理です。

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また歯科医院で行うホワイトニングでは、ホワイトニング剤を歯の表面に塗った後、光を当てます。これは先述のような色素を分解する化学反応が、光を当てることで強まるからです。
つまり光を当てることで、より効率的・効果的に歯のホワイトニングができるのです。
生体への影響と安全性
ホワイトニングの過程で生じる影響と安全性についても理解が必要です。
知覚過敏
- 過酸化物が象牙細管に浸透し、歯髄に刺激を与えることがあります。
- 一時的な現象で、施術後数日以内に収まることが一般的。
エナメル質への影響
- 適切な濃度で使用すれば、エナメル質の硬度に影響を与えることはありません。
- ただし、施術後の再石灰化ケアが重要。
長期的な影響
- 繰り返し行う場合でも、歯科医の指導の下で行えば安全。
ホワイトニングで白くできる歯・できない歯

ホワイトニングできる場合とできない場合があります。
ホワイトニングで白くできる歯
自分の歯であり虫歯などがなければ、基本的にどの歯も白くすることができます。着色や茶渋など歯の表面についた色に限らず、歯そのものの色も白くできるのがホワイトニングです。
- 天然歯・・ホワイトニングは歯のエナメル質や象牙質に作用するため、自然の歯が対象となります。
- 加齢による黄ばみがある歯・・年齢とともにエナメル質が薄くなり、象牙質の色が透けて見える場合にも効果があります。
- 食べ物や飲み物による着色・・コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなどが原因の表面や内部の色素沈着に対応可能。
- 喫煙による着色・・タールやニコチンによる歯の黄ばみにも効果があります。
ホワイトニングで白くできない歯
詰め物や被せ物など、人工物はホワイトニングをしても白くすることができません。それらを白くしたい場合は、希望の色で作り直す必要があります。
そのためいずれ歯を白くしたいと考えている場合は、先にホワイトニングをし、ホワイトニング後の歯の色に合わせて詰め物や被せ物を作った方が経済的です。
- 被せ物や詰め物・・クラウン(被せ物)やインレー(詰め物)、ラミネートベニアはホワイトニングでは白くなりません。これらの素材は色素分解の対象外です。
- 神経が死んだ歯・・外傷や治療の影響で神経が死んだ歯(失活歯)は、ホワイトニングで改善が難しい場合があります。専用の「内部漂白」が必要になることがあります。
- テトラサイクリン歯・・抗生物質テトラサイクリンの影響で歯の内部が変色している場合、ホワイトニングだけでは十分な効果が得られないことがあります。
- フッ素斑(ホワイトスポット)・・過剰なフッ素摂取でエナメル質が白濁している部分は、逆に目立つことがあります。
- 重度の着色・・重度の内部着色や遺伝的な要因による歯の色変化には限界があり、他の審美治療(ラミネートベニアやクラウン)を検討する必要があります。
▼それだけでなく年齢や疾患、お口の中の状態によってはホワイトニングできない方もいます。詳しくはこちらでまとめています。
https://www.matsumoto.or.jp/toothteeth/cannot-whitening/
歯科医院とサロンでは効果が違う
歯科医院以外にサロンでもホワイトニングをやっていますが、ホワイトニング効果が全然違います。また、歯科医院と市販のホワイトニング用品でもその効果は全然違います。
歯科医院の方が効果を感じやすい
着色や茶渋などちょっとした色であれば、サロンでも歯を白くすることができます。しかし歯そのものの色を白くするのは歯科医院でしかできません。これは使用しているホワイトニング剤やその成分が違うからです。
サロンや市販品で使用できるホワイトニング剤・成分には制限があり、これは法律で決められていること。かかる費用や値段はサロンの方が圧倒的に安いので、自分の歯の色の原因によって上手く使い分けると良いでしょう。
▼ホワイトニングサロンと歯科医院の違いはこちらで詳しくまとめています。
https://www.matsumoto.or.jp/toothteeth/self-whitening-effect/
まとめ

ホワイトニングは、歯の色素を分解する化学反応を利用した、安全で効果的な方法です。歯科医院でのホワイトニングは特に高い効果が期待でき、歯を白くするだけでなく口元全体の印象を明るくします。
しかし、人工物には効果がないため、詰め物や被せ物がある場合は事前に相談することが重要です。自分の歯の状態や予算に合わせて適切なホワイトニング方法を選び、美しい白い歯を手に入れましょう。