
ワイヤー矯正や裏側矯正は、重度の不正咬合にも対応できるのが大きな特徴です。一方で、見た目や装置による不快感などのデメリットもあります。ワイヤー矯正のメリットとデメリット、どのような方に適しているのかをご説明します。
ワイヤー矯正とは


矯正を希望される大人の方には、ワイヤーブラケット矯正とマウスピース矯正の二種類があげられます。ワイヤーブラケット矯正は、装置を歯の表につけるワイヤー矯正と、歯の裏側に装置をつける裏側矯正の2種類があります。
歯の表側にブラケットを貼り付けて、その一つひとつにワイヤーを通して力を書けることで歯を動かしていく矯正治療法。
ワイヤー矯正の基本原理

ワイヤー矯正では、歯にブラケット(小さな金属やセラミックの装置)を接着し、これにアーチワイヤー(弧を描く金属ワイヤー)を通します。アーチワイヤーは歯を理想的な位置に引っ張る力を持ち、その力で歯が少しずつ動いていきます。1ヶ月に1回、装置の調整のために通院が必要で、歯は数か月から数年かけて理想的な位置に動いていきます。
メリット
- 効果的な治療・・ほとんどの不正咬合や歯列の問題に対応できます。
- 持続的な力・・アーチワイヤーによる持続的な力で、効率的に歯を動かします。
- 精密な調整が可能・・治療中にワイヤーを調整することで、歯の動きを細かくコントロールできます。
- 適用範囲が広い・・子供から大人まで様々な不正咬合を治療できます。
- 装置の耐久性・・ブラケットは壊れにくいという特徴があります。
- 美容面での改善・・笑顔に自信がもてるようになります。
- 健康面での改善・・歯並びが整うと衛生面、機能面でのメリットがあります。
- 矯正治療の中では費用が安い・・裏側矯正、マウスピース矯正と比べると費用が安い傾向があります。
1. 効果的な治療
ワイヤー矯正は、様々な不正咬合や重度のケースまで、歯列や咬合の問題に対応できる効果的な治療方法です。以下のような問題を改善できます。
- 不正咬合・・歯が重なって生えている、歯がすき間だらけなど
- 噛み合わせの問題・・上顎前突、下顎前突、開咬、交叉咬合など
2. 持続的な力
ワイヤー矯正は、アーチワイヤーを使用して歯に持続的な力をかけます。この持続的な力が歯をゆっくりと確実に移動させるため、理想的な歯列に整えることができます。
3. 精密な調整が可能
ワイヤー矯正は、治療中に一ヶ月に1度の頻度でワイヤーの調整を行います。これにより、歯の動きを細かくコントロールでき、動きにくい歯に対しても個別に調整が行われるため、計画通りに治療を進めることができます。
4. 適応範囲が広い
ワイヤー矯正は、年齢や症例に関わらず多くの患者さんに適用可能です。子供から大人まで、広範な年齢層で使用され、複雑な症例にも対応できます。
5. 装置の耐久性
メタルブラケットは非常に耐久性があり、破損しにくいです。また、セラミックブラケットは白いので見た目が良く、一定の強度を持っています。当院では主にセラミックのブラケットを使用します。
6. 美容の面での改善
ワイヤー矯正によって歯並びが整うことで、笑顔やお顔全体の印象が改善されるため、美容の面でも大きなメリットがあります。歯並びが整うと、笑顔に自信が持てるようになり、積極的な性格になり、人生を楽しむことに繋がります。
7. 健康面の改善
歯並びが整うことで、衛生面や機能面でのメリットがあります。
- 口腔衛生の向上・・歯並びが整うと、歯磨きがしやすくなり、歯垢や歯石がたまるのを防ぎやすくなります。これにより、虫歯や歯周病のリスクが減少します。
- 咀嚼機能の向上・・咬み合わせが改善されることで、食べ物をしっかり噛めるようになり、消化器官への負担が軽減されます。
- 発音の改善・・歯並びや咬み合わせが整うことで、発音が改善される場合があります。
8. 矯正治療の中では費用が安い
矯正治療は保険が適用されないため、決して安い治療費ではありませんが、ワイヤー矯正は裏側矯正やマウスピース矯正と比べると費用が安いというメリットがあります。
デメリット
- 見た目の問題・・メタルブラケットは目立ちやすく矯正治療中と周囲にわかってしまう。※白いブラケットならあまり目立たない。
- 不快感・・ブラケットやワイヤーが口内に触れるため、ワイヤーの調整後すぐは違和感や痛みを感じることがあります。
- 食事制限・・硬いものや粘着性のある食べ物は避ける必要があります。
- ブラッシングの難しさ・・ブラケットの周りから汚れをしっかりと落とすためには特別なケアが必要です。
1. 見た目が気になる
ワイヤー矯正は、ブラケット(歯に装着する小さな装置)とワイヤーを使用するため、目立ちやすいという欠点があります。特に金属製のブラケットは目立ちやすく、人前で話すときや写真を撮るときに気になることがあるかもしれません。
対策
- 透明や白色のブラケットを使用する「審美ブラケット」
- ワイヤーを白色にコーティングしたタイプの使用
- 裏側矯正(舌側矯正)にすることで目立ちにくくする
2. 痛みや違和感がある
ワイヤー矯正では、歯を移動させる力が強いため、調整後に痛みを感じることがあります。特に矯正開始直後やワイヤーを締め直した後は、噛むときに違和感や痛みを伴うことが多いです。
対策
- 矯正開始直後や調整後は、やわらかい食べ物を中心に摂る
- 痛みが強い場合は、市販の鎮痛薬を服用する
- ワイヤーの端が頬の内側に当たって痛い場合は、矯正用ワックスを使用する
3. 食事がしにくくなる
ワイヤー矯正では、食事の際に食べ物が装置に引っかかりやすく、硬いものや粘着性のあるものを食べると、ブラケットが外れたりワイヤーが曲がったりすることがあります。
食べにくいものの例
- 硬い食べ物(せんべい、フランスパン、ナッツ類)
- 粘着性の高いもの(ガム、キャラメル、餅)
- ワイヤーに絡みやすいもの(ほうれん草、繊維質の野菜)
対策
- 大きな食べ物は小さく切って食べる
- 奥歯で噛むように意識する
- 食後に水で口をすすぎ、食べカスを取り除く
4. 口内炎ができやすい
ワイヤーやブラケットが口の中に擦れることで、口内炎ができやすくなります。特に矯正を始めたばかりの頃は、口内の粘膜が装置に慣れていないため、痛みを伴うこともあります。
対策
- 矯正用ワックスを使ってワイヤーの刺激を軽減
- 口内炎ができたら、塗り薬やパッチを使用
- ビタミンB群を含む食事を心がける(レバー、卵、納豆など)
ワイヤー矯正の治療の流れ
- 歯を並べるスペースを空ける
- 上下顎の歯の表面にブラケットと呼ばれる突起物を装着する
- ブラケットの中にワイヤーを通し、ブラケットと結紮
- 矯正器具を装着すると通常での歯みがきが難しくなり、歯磨き指導を行う
- 1ヶ月に1回くらいの通院間隔で来院
- ドクターが歯の動きをチェックするワイヤーの調整をし、正しい歯の位置まで動かす
- 約2年できれいな歯並びになる
- 動的治療は終了し、この位置に歯を固定する静的治療を行う
- リテーナーと呼ばれる保定装置(固定式・可撤式などあり)を装着する
- 通院間隔は3ヶ月に1回程度
- しっかりと固定したら保定は終了
リテーナー装着を途中で止めてしまうと、せっかく綺麗になった歯並びが後戻りを起こすトラブルになります。注意が必要です。
歯列矯正を検討するタイミング
歯並びが悪く周囲からの見た目が気になれば、歯列矯正を検討される方は多くおられます。歯並びが悪いことを専門的に不正咬合と呼びますが、不正咬合の種類も様々です。
軽度・中度・重度の程度や、乳歯のあるお子様か永久歯のみの大人かなど年齢により、矯正治療法や矯正の範囲(部分矯正か全顎矯正か)、治療期間、費用などが異なります。患者様のお悩みやご希望を伺う歯科医院でのカウンセリング、お口の状態の診断などを行い、歯科医師が患者様に改善するための治療計画をご提案いたします。
先天的な顎変形症など特例を除き、基本的には歯科矯正は自由診療です。そのため、保険適用内の虫歯や歯周病などの治療と違い料金が高くなり、クリニックによって価格に差があります。
まとめ

ワイヤー矯正は、幅広い不正咬合に対応し、歯を精密に動かせる優れた治療法です。一方で、装置が目立つことや不快感、歯磨きの難しさといった課題もあります。
矯正を検討する際には、メリットとデメリットを理解し、ご自身の症状やライフスタイルに合った方法を選ぶことが重要です。歯科医師とのカウンセリングを通じて、最適な治療計画を立て、美しい歯並びを目指しましょう。
監修

歯科衛生士 坂上明美
医療法人真摯会
まつもと歯科
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