よくあるご質問
口臭・その他

口臭の原因となる物質

口臭の原因の多くは口腔内の細菌が作り出す化学物質にあります。揮発性硫黄化合物(VSC)や短鎖脂肪酸、アミン類など、これらの物質は独特の強い臭いを発生させることで知られています。口臭の主な原因物質とそれぞれの特徴、またそれに対する対策方法についてご説明します。

口臭の原因物質

口臭

揮発性硫黄化合物(VSC)

口臭は多くの場合、口腔内の細菌が原因となる揮発性硫黄化合物(VSC)やその他の化学物質によって引き起こされます。

このVSC(揮発性硫黄化合物)は、主に3つの成分から成ります。

 ①硫化水素

 ②メチルメルカプタン

 ③硫化ジメチル

これらが混ざり合うことで独特なにおいを発します。

1. 硫化水素 (Hydrogen Sulfide)

硫化水素は、卵の腐ったようなにおいがする物質です。タンパク質中のシステインが分解される際に生成されます。

  • 腐った卵のような臭いが特徴。
  • 歯垢や舌苔の中に存在する嫌気性細菌が、食べ物のタンパク質を分解して生成します。

2. メチルメルカプタン (Hydrogen Sulfide)

メチルメルカプタンは生臭い、野菜の腐ったようなにおいがする物質です。石油などにも含まれますが、人や動物の排泄物にも含まれます。主に歯周病菌から産生されるため歯周病に特徴的な口臭成分です。

  • 腐ったキャベツのような臭いを発します。
  • 歯周病が進行した患者さんの口腔内で特に多く発生します。

3. 硫化ジメチル (Dimethyl Sulfide)

硫化ジメチルは生ゴミのようなにおいがします。肝臓疾患などの全身疾患由来の場合もあります。面白いのは、海苔の香り成分として重要な物質だということです。

  • 甘いような独特な臭いが特徴。
  • 主に血流や呼吸器から放出され、口腔外の原因(例えば肝臓病や糖尿病)に関連していることが多いです。

揮発性硫黄化合物は嗅覚を麻痺させる作用があり、自分自身は臭いを強く感じていないことがあります。

https://www.nhs.uk/conditions/bad-breath/

短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸も口臭の原因となることがあります。これらは、口腔内の細菌が脂質や糖を分解する際に生成されます。主な短鎖脂肪酸には以下のものがあります。

  • 酢酸(CH₃COOH)・・酢のような酸っぱい臭いがします。
  • プロピオン酸(C₂H₅COOH)・・発酵した臭いがします。
  • 酪酸(C₃H₇COOH)・・悪臭が強く、腐敗臭の原因となります。

アミン類

アミン類も口臭の原因となることがあります。これらは、口腔内の細菌がタンパク質を分解する際に生成されます。主なアミン類には以下のものがあります。

  • カダベリン(H₂N(CH₂)₅NH₂)・・腐った魚のような臭いがします。リジンの分解によって生成されます。
  • プトレシン(H₂N(CH₂)₄NH₂)・・腐った肉のような臭いがします。オルニチンの分解によって生成されます。

口臭が発生するメカニズム

口臭は、口腔内の細菌活動によって発生します。主なメカニズムは以下の通りです。

細菌の増殖

口腔内には、嫌気性細菌(酸素を嫌う細菌)が多く存在します。これらは歯垢や舌苔、歯周ポケットに潜んでおり、酸素を嫌うために歯周ポケットの奥へ奥へと入っていく性質があります。

タンパク質の分解

食べ物の残りや口腔内の死細胞が、細菌の活動によって分解される過程で揮発性硫黄化合物が生成されます。

唾液の減少

唾液には細菌の活動を抑制する作用があります。しかし、口が乾燥すると細菌が活発になり、口臭が強まります。
例: 睡眠中やストレス時に唾液分泌が減少し、朝起きたときに強い口臭を感じることがあります。

口臭の原因物質への対策方法

口臭

上記の物質が特に多く産生されるのは歯周病です。

歯周病だと、歯周ポケットにかなりの数の細菌がいます。これらが口臭の原因となるVSC(揮発性硫黄化合物)を産生します

歯科医院で歯周病の治療を受けたり、治療の一環として歯磨きを徹底することが重要です。これにより細菌の数が減り、口臭も収まっていきます。

歯肉炎の段階で歯茎の異常に気付ければ、歯磨きだけで治ることがあります。しかし歯周病は、残念ながら歯磨きだけでは治りません。

患者さんが日常的に実践できる対策を以下にまとめました。

歯磨きと歯間清掃

  • 歯垢を取り除くために、正しい歯磨き方法を習得しましょう。
  • 歯間ブラシやデンタルフロスを使うと効果的です。

舌磨き

  • 舌苔を除去するために、舌ブラシを使用するのがおすすめです。
  • 舌の奥から手前に向けて優しく磨きましょう。

唾液分泌を促す

  • ガムを噛む、よく噛んで食べるなど、唾液の分泌を促す行動を意識しましょう。
  • 水分を十分に摂取し、口腔乾燥を防ぎます。

定期的な健診

  • 歯科で定期的に健診を受け、歯周病や虫歯の早期発見・治療を行いましょう。

▼歯肉炎と歯周病の違いはこちらでまとめています。

https://www.matsumoto.or.jp/toothteeth/toothbrushing-pain/

口臭を悪化させる要因

いくつかの要因が口臭を悪化させます。これらは患者さん自身がコントロールできるものと、専門的な治療が必要なものがあります。

食べ物

  • ニンニクや玉ねぎなどの臭いの強い食品は、一時的に口臭を引き起こします。
  • これらは消化後に血液に吸収され、肺から呼気として排出されることがあります。

口腔ケア不足

  • 歯垢や舌苔の蓄積は、揮発性硫黄化合物を発生させる細菌の温床となります。
  • 毎日の歯磨きと歯科医院での定期健診によってお口の中を清潔に保つことが出来ます。

歯周病

  • 歯周ポケットの中で増殖する細菌が原因で、硫化水素やメチルメルカプタンが多く発生します。
  • 歯周病が悪化すると歯ぐきに膿が出て、強い悪臭となります。

全身疾患

  • 糖尿病(甘い臭い)、肝臓病(腐敗臭)、腎臓病(アンモニア臭)などが口臭の原因になることがあります。

まとめ

歯

家族に口臭を指摘されればもちろんのこと、電車の中で近くの人が嫌な顔をしたり友人にガムを勧められたり。ちょっとしたことから、自分の口臭が気になり始める方は多くいます。

また口臭はかなりデリケートな問題なので、言えない・指摘できないという方は多くいます。これはつまり、自分から口臭がしていても、多くの人は言ってくれないということ

口臭は自分ではわからないものだからこそ、一度気になり始めると不安は募っていくばかりですよね。周りの人の気持ちが気になって口を開けて笑えなかったり、話しづらくなったりします。

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口臭検査では、口臭を数値化するためだけに作られた専用の機械を使います。口臭が数値化されると、自分の口臭は実際にあるのか人を不快にさせるほどなのか?といったことがわかります。つまり自分の口臭を客観視できるというわけです

唾液検査も口臭の数値がわかるのでおすすめです。あと、虫歯になりやすいか、歯周病があるのかも同時にわかります。

https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/halitosis-bad-breath

 

監修

歯科衛生士 坂上明美

医療法人真摯会
クローバー歯科クリニック
まつもと歯科

【所属学会】
日本歯周病学会
日本審美歯科学会
日本医療機器学会
日本アンチエイジング歯科学会
【資格】
スイスデンタルアカデミーエキスパート
第2種滅菌管理士
ホワイトニングコーディネーター
デンタルコーディネーター

口臭予防のための歯のクリーニングについてもっと詳しく

 

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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