
歯は、年齢とともにあきらめるもの?
「年をとったら歯が抜けるのは当たり前」
「もう入れ歯だから、今さら歯医者に行っても仕方ない」
そんなふうに思っていませんか?
でも実は“歳だからこそ、歯のケアがもっとも大切になる”んです。
噛む力が衰えると、食べられるものが限られ、体力が落ちたり、認知機能の低下や誤嚥性肺炎といったリスクも増えてしまいます。
そして、「歯を守ること」は「健康寿命をのばすこと」へとつながっているのです。
このコラムでは、予防歯科がどんなことをするのか、なぜ高齢になってからこそ通うべきなのかを、やさしく・わかりやすく解説していきます。
もしあなたやあなたの大切なご家族が、「もう手遅れかも」と感じていたとしても、始めるのに遅すぎることはありません。
さぁ、未来の自分のために、今日からできる一歩を一緒に踏み出してみましょう。
目次
予防歯科って何をするの?シニア世代こそ通うべき理由

「もう歳だし、今さら歯のことを気にしても…」なんて思っていませんか?
でも実は、高齢になってからこそ“予防歯科”が力を発揮するんです!
予防歯科とは、虫歯や歯周病になる前に、それらを防ぐためのケアやチェックを行う歯科医療のこと。定期的な歯科健診、歯垢や歯石の除去、歯磨き指導、入れ歯や被せ物のチェックなどを通じて、今ある歯とお口の健康を長く守ります。
特に高齢になると、以下のような理由で予防歯科が重要になってきます。
加齢により免疫力が低下し、歯周病が進行しやすくなる
唾液の分泌量が減り、口腔内の自浄作用が弱まる
入れ歯や被せ物の不具合が、体調不良や転倒リスクにつながることも
そして注目したいのが、「8020運動」。これは「80歳で20本以上自分の歯を保とう」という厚生労働省と日本歯科医師会が推進している運動です。
自分の歯が20本あれば、ほぼ問題なく食事ができるとされ、健康寿命の延伸につながります。
当院でのメンテナンスはエアフローを使用します

8020運動関連サイト
8020推進財団
「8020運動」の普及啓発を目的とした公益財団法人で、運動の概要や達成のためのセルフケア・プロケアの方法、各種資料などを提供しています。
厚生労働省 e-ヘルスネット:8020達成のために必要な予防対策
厚生労働省が提供する健康情報サイトで、8020運動の背景や予防対策について解説しています。
日本歯科医師会:8020運動の紹介ページ
日本歯科医師会が8020運動の概要や関連活動について紹介しています。
“噛める”が変える毎日の生活と健康
食べたいものを自由に食べられる。
これって、当たり前のようでいて実はとても尊いこと。
高齢になると、食事が偏りやすくなりがちです。しかし、自分の歯がしっかり残っていて「噛める」状態を保てていれば、繊維質の多い野菜や、タンパク質の多い肉や魚もしっかり摂れるようになります。
しっかり噛めることは、以下のような効果をもたらします。
栄養バランスの改善:偏った食事による低栄養を防げる
認知機能の維持:噛むことで脳が活性化され、認知症予防にもつながる
誤嚥の予防:咀嚼機能が保たれていると、食べ物を正しく飲み込める
逆に、歯を失って噛めなくなると「やわらかいものしか食べない生活」になりがちで、結果として筋力も気力も落ちてしまうんです…。
定期健診で見つかる病気のサインとは
「痛くないから大丈夫」と思っている方、ちょっと待って!
実は、歯周病は初期症状がほとんどなく、静かに進行する病気なんです。
しかも歯周病は、歯を失う原因のトップであるだけでなく、以下のような全身疾患にも深く関わっているとされています:
糖尿病(互いに悪化させ合う関係)
誤嚥性肺炎(口腔内細菌が肺に入り込む)
心疾患や脳血管疾患
定期健診では、歯ぐきの状態や噛み合わせ、粘膜の異常、舌の動きなどもチェックされます。これによって、虫歯や歯周病だけでなく、口腔がんや全身の健康状態に関わるサインも早期発見できるのです。
「年齢的にもう遅いかも…」と感じている方こそ、“今ここから”予防歯科を始めることに価値があります。
予防歯科に通うことで介護リスクも減らせる?

「歯医者に通うだけで、介護を受けるリスクが減るなんて…ちょっと大げさじゃない?」
そう思う方もいるかもしれません。でも、実はこれ、今や“常識”になりつつある健康常識なんです。
キーワードは、最近よく耳にする「オーラルフレイル」。
これは、「口の機能の衰え」から始まる全身の虚弱状態の第一歩を指します。
オーラルフレイルって何が起こるの?
たとえば、こんな変化ありませんか?
硬いものが噛みにくくなった
うまく飲み込めず、むせやすくなった
口の中が乾きやすい
滑舌が悪くなった気がする
これらはすべて、口腔機能の衰えのサイン。
そしてこのサインを見逃してしまうと…
食事量が減って 低栄養 に
噛む・しゃべる機会が減って 筋力や認知機能が低下
飲み込み力が落ちて 誤嚥性肺炎のリスクが上昇
結果として、介護が必要になるリスクがグンと高まってしまうのです。
予防歯科で「口の老化」をストップ!
じゃあどうするか。
それが、定期的に歯科医院でチェック&ケアを受けることなんです。
予防歯科ではこんなことが行われます:
- 歯や歯ぐきの健康チェック → 虫歯や欠けた歯がないか確認する
- 歯垢、歯石をクリーニング→歯周病の進行を防ぐ
- 乾燥対策のアドバイス → 唾液量アップで免疫強化!
たった数ヶ月に一度の通院が、「噛める」「話せる」「飲み込める」を守ってくれるんです。
実際の研究でも証明されています!
東京大学の調査によると、歯が20本以上残っている高齢者は、10本未満の人に比べて要介護認定を受けるリスクが約半分になるという報告も。
また、定期的に歯科健診を受けている人のほうが、自立した生活を長く続けている傾向があることも明らかになっています。
介護の予防は“お口”から始めよう
つまり、「歯のことなんて後回し」と思っていたら、実は体全体の健康にブレーキをかけてしまう可能性があるということ。
逆に言えば、予防歯科に通うことで、
食べる楽しみが続く
体力と意欲が保てる
医療費や介護費の負担が抑えられる
こんな“未来の安心”につながっていくのです。
歯磨きひとつ、健診ひとつが、これからの人生の選択肢を増やす行動になります。
「口の健康は、全身の健康の入り口」──その事実に、今こそ目を向けてみてくださいね。
家族で支える予防歯科:通院を応援する工夫とは?
「予防が大事ってわかっていても、うちのおばあちゃん、面倒がってなかなか行ってくれなくて…」
「父にすすめても“もう歳だし”って話を聞いてくれないんです」
そんな声、実はとても多いんです。
でも、ご本人にとっても、“家族に応援されながら続ける予防歯科”ほど心強いものはありません。ここでは、通院を支えるために家族ができるシンプルな工夫をご紹介します。
1.「通う理由」を“健康”ではなく“楽しみ”に変える
「病気を予防するため」と伝えるよりも、「いつまでも〇〇を楽しんでほしいから」と目的を変えてみるのがコツ!
例:
- 「またあのお寿司屋さん、一緒に行こうよ!」
- 「お孫ちゃんの七五三、一緒にお祝いしたいから元気でいてほしいな」
「噛める=人生の楽しみが広がる」という視点に置き換えると、自然と前向きな気持ちになります。
2. 通院のスケジュールは“イベント感”を出してみる
カレンダーに「歯医者さん」と書いて可愛いシールを貼ったり、終わったあとにカフェに寄ったりするなど、通院を“ちょっとしたおでかけ”にする工夫が効果的です。
- 天気のいい日に合わせる
- 車で送迎してドライブを楽しむ
- お気に入りの帽子や服でちょっとおしゃれして出かける
「また行きたい」と思えるような演出を一緒に考えてあげましょう。
3. こまめな声かけと、“励ましすぎない”コミュニケーション
「行ったほうがいいよ!」と何度も言うと、かえって反発されてしまうことも。
大切なのは、押しつけるのではなく、“気にかけている”ことを伝えるということです。
たとえばこんな一言:
「口の調子どう?噛みにくいところない?」
「歯医者さんの予約、また一緒に考えようか?」
「この前のお話、聞かせてくれてありがとう」
寄り添いながら、少しずつ行動を後押ししていくスタンスが◎です。
4. 本人が「よかった」と感じられる体験を一度つくる
一度でも「行ってよかった」「口の中がスッキリした」と実感できれば、次の通院への抵抗がグッと減ります。
- 丁寧に接してくれる医院を選ぶ
- 会話が楽しめる歯科衛生士さんがいるところに通う
- 本人が通いやすい距離や設備(バリアフリー・送迎の有無)を確認する
“最初の一歩”を一緒にサポートしてあげるのが、最大の応援になります。
家族の応援は、予防歯科の“継続力”に変わる
予防歯科は、一度で終わるものではありません。
でも、家族の「さりげないサポート」や「一緒に向き合う姿勢」が、続ける力になるんです。
「通わせる」ではなく「一緒に未来を守る」感覚で、まずは1回、予約を取るところから始めてみませんか?
まとめ
歯を守ることは、人生を守ること。
歳を重ねると、体のあちこちに気をつかうようになりますが、お口のケアもとても大事です。
予防歯科は、ただ歯をきれいにするだけじゃありません。
会話の喜びを保つ
認知症や介護のリスクを減らす
…そんな「毎日の元気」を、さりげなく支えてくれる存在です。
そしてそれは、何歳からでも遅くありません。
「自分の歯で、もう一度あの味を楽しみたい」
「大切な人と、笑顔で過ごしたい」
そんな気持ちがあるなら、それは十分なきっかけ。
まずは、近くの歯科医院での健診予約から始めてみてください。
そして、ご家族にも「一緒に行ってみようよ」と声をかけてみてくださいね。