叢生とはガタガタの歯並びのことで、日本人に特に多い不正咬合です。叢生の原因や治療方法についてご説明します。
叢生(そうせい)ってどんな歯並び?
叢生とはガタガタの歯並びのことで、「乱ぐい歯」とも呼ばれています。また犬歯が歯列から大きくはみ出して生えてしまう八重歯も叢生の一種です。
叢生は見た目の悪影響だけでなく、歯がデコボコして部分的に重なっているために、食べかすなどが溜まりやすく、歯ブラシでの清掃もやりにくいので虫歯や歯周病になりやすいという問題があります。
前歯だけでなく、奥歯の噛み合わせも悪い場合が多いです。
叢生の原因とは?
叢生になる原因は、一般的には顎が小さいことです。
1. 顎が小さい、歯が大きい
顎が小さい場合は全ての永久歯がきれいに並ぶだけのスペースがないため、一部の歯が重なったり斜めになったりして、歯並びがデコボコになります。
歯の大きさや顎の大きさ、顎の形などは遺伝することがあり、顎が小さい、歯が大きい場合は叢生になりやすい傾向があります。
2. 歯並びを悪くするような癖がある
日頃の癖によって歯並びがガタガタになることがあります。その癖とは、舌で前歯を押す、口呼吸、頬杖、爪噛みなどです。それらの癖によって歯が動いてしまい、歯並びを悪くしてしまいます。
歯並びを悪くするような癖があると、一度矯正治療で歯並びを整えても、また癖によって歯並びが乱れるリスクがありますので、出来るだけ治すようにしましょう。
インビザライン矯正で叢生は治せる?
インビザラインで叢生の治療は可能です。ただし、重度の叢生で抜歯矯正が必要な場合は、インビザラインだけで治療を行うと治療期間が3年程度かかってしまうことがあります。
その場合は、小臼歯を抜歯してから数ヶ月はワイヤー矯正を行い、抜歯後のスペースがかなり閉じた時点でインビザラインに変え、歯並びの細かい調整を行っていくという方法があります。
軽度な叢生はインビザラインで概ね治療可能
叢生の症状が軽度で、歯の重なりやガタガタが少ない場合は、インビザラインで治療が可能なケースが多いです。どの程度を軽度というかは、前歯の重なりや奥歯のずれが少ないことと、抜歯の必要がないということがあげられます。
インビザラインのようなマウスピース矯正では、歯を少しずつ動かして行きますので、抜歯して歯を大きく動かす必要がある治療にはあまり向いていません。
抜歯矯正であっても、インビザラインで治療可能なケースはありますが、ワイヤー矯正の方が早く治ります。
インビザラインで治療出来ない重度の叢生とは?
八重歯や歯の重なりが何か所もある、歯が二重に重なっているなどのケースは重度の叢生に分類されます。
また、骨格に原因があって叢生が起こっている場合、インビザラインでは対応できない可能性があります。
叢生をそのままにしておくと起こるトラブル
歯並びがガタガタの場合、見た目の悪さから矯正治療を考える方が多いのですが、見た目以外にも歯の健康にかかわるようなトラブルを起こすリスクがあります。
1. 虫歯・歯周病になりやすい
歯が重なり合って八重歯になっている場合や、前歯が重なって1本がへこんでいる場合などでは、歯ブラシで汚れが落としにくく、デンタルフロスも通りにくいため、汚れがたまりがちです。
食べかす等の汚れは歯垢と呼ばれる細菌の塊になり、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。歯垢はやがて歯石に変わり、歯石は歯磨きでは落とせませんので、歯科医院でクリーニングを受ける必要があります。
2. しっかり噛めない
歯並びが乱れて叢生になり、噛み合わせが悪いと、食事の際にしっかりと噛めなくなります。噛めないと、食べ物を細かく砕くことが出来ず、消化に悪い影響を与えます。
3. 口臭が強くなる
叢生は歯と歯の間に汚れがたまりやすく、口臭が発生しやすいです。虫歯や歯周病が原因の口臭もありますので、まず歯や歯茎についた汚れを除去する必要があります。
4. 噛み合わせがずれると歯に負担がかかり傷めることになる
叢生によって噛み合わせがずれると、その結果、歯の一定の場所が強く噛み合って、歯を傷めるリスクがあります。その結果、歯が擦り減る、割れる、歯根にヒビが入る等のトラブルが起こり、歯の寿命を縮めてしまうことに繋がります。
叢生のインビザラインでの治療に関するQ&A
叢生はガタガタの歯並びを指し、「乱ぐい歯」とも呼ばれます。犬歯が歯列から大きくはみ出す八重歯も叢生の一種です。叢生の歯は食べ物の残りやすく、清掃が困難で虫歯や歯周病のリスクが高まります。
叢生の主な原因は顎の小ささです。顎が小さいと、永久歯がすべて適切に並ぶスペースが不足し、歯が重なったり斜めになったりします。遺伝による歯の大きさや顎の形も叢生に影響します。
軽度の叢生はインビザラインで治療可能ですが、重度の叢生や骨格の問題がある場合はインビザラインだけでは対応困難です。重度の場合、初期段階でワイヤー矯正を行い、スペースが開いた後にインビザラインに切り替えることがあります。
まとめ
叢生は不正咬合の一種で、日本人に多く見られます。原因は主に顎の小ささにあり、顎が小さく歯が並びきらないために八重歯や歯の重なりが生じます。
叢生は見た目の悪さだけでなく、歯の健康にも影響を及ぼします。歯が重なっていると歯磨きがしにくいために虫歯や歯周病リスクが高まり、噛み合わせの問題や口臭、歯の損傷などが起こる可能性があります。
インビザライン矯正は軽度な叢生に対して効果的ですが、抜歯矯正が必要な場合でも一部のケースでは利用できます。しかし、重度の叢生や骨格に原因がある場合には、他の治療方法が必要かもしれません。叢生の治療は見た目だけでなく、歯の健康と機能を向上させるために重要です。歯医者のアドバイスを受け、適切な治療を検討しましょう。
▼まつもと歯科の矯正治療についてはこちらで詳しく解説しています
インビザラインによる叢生の治療については、以下の論文を参考に説明します。
1. 叢生矯正の有効性
Li and Mai (2017) の研究では、インビザラインを用いたアーチの拡張が、軽度から中程度の叢生を効果的に治療する方法として報告されています。この研究では、叢生の矯正において、中心切歯の傾斜を維持しつつアーチ拡張によって問題を解決しています。【Li & Mai, 2017】
2. 顎骨量への影響
Hellak et al. (2016) による研究では、インビザライン治療と歯間エナメルの削減(IER)が成人の叢生に伴う顎骨量に与える影響を評価しています。この研究では、特に下顎でのアーチの拡大が行われる場合、舌側に顎骨の厚みが増加することが観察されました。【Hellak et al., 2016】
これらの研究から、インビザラインによる叢生の治療は、アーチの拡張を通じて軽度から中程度の叢生を効果的に矯正できる可能性があり、また顎骨量にも影響を及ぼすことが示されています。